週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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　ゴルフ場の民事再生が珍しくなくなるとともに、最近では外資によるゴルフ場買収も珍しくなくなってきた。来場者確保を目的にプレー権の確保が常識になってきたこと、外資自体が会員や地権者と話し合いができる日本人スタッフを揃えてきていることなどから、今や「外資は何をするかわからない」といった類のアレルギーも薄まりつつあるが、そんな中、ドイツ銀行グループが買収し、ゴルフ場買収ではすっかり常連になったローンスターグループが運営を受託しているプレミアゴルフ（株）が、12月4日、民事再生の申立手続きを取ったのだ。

　プレミアゴルフ（株）といっても馴染みがなくても、旧（株）ゴルフ西洋と言えばわかる読者諸氏も多いだろう。西武百貨店グループの西洋環境開発が所有していたゴルフ場を、グループの再編策の一環で、後にひとまとめにして経営するようになった会社で、美浦GC（茨城県）、桂GC（北海道）、たけべの森GC（岡山県）、若木GC（佐賀県）、嵐山GC（沖縄県）の5コースを経営している。

　ことの発端は、今年5月にゴルフ西洋の株式を保有していた西友グループ各社が、全株まとめてドイツ銀行グループのマリンインベストメント社に売却したことにある。マリンインベストメントは、その後、株式の半分をローンスターグループのパシフィックゴルフマネジメントに転売、現在はそのパシフィック社が運営に当たっている。

　ちなみに、5コースのうち、平成3年9月～11月にかけて開場した、たけべの森、若木、嵐山では、いずれも今年秋には償還期限を迎えるため、昨年秋の時点で会員に対し、会員権の3分割と10年延長を提案、いずれも大半の会員が了承、理事会決議もなされていた。そこへもってきて、会員への何の説明もないまま、前述の突然の買収劇、さらに「買収後、7月には社名がプレミアゴルフ（株）に変わり『ゴルフ西洋時代に決めた会員権分割と、預託金償還期限の10年延長は中止する』と言ってきた。そもそも株主が替わる話も聞いてなかったうえ、預託金の5パーセントを出資、95パーセントをカットする株主会員制への移行を提案してきた。倒産会社並みの95パーセントカットとはふざけている」と、ある会員は怒りを露わにする。

　また、抵当権などついていなかった各コースには、ドイツ銀グループ買収と同時に一律15億円の抵当権も付いた。「高圧的で、こちらの条件が飲めないなら破産や民事再生に持ち込む、といった態度」（前出の会員）だったことから会員がますます反発、自らの預託金債権の保全のため、コースに仮差押を付けたところ、民事再生の申立があったという。

　各コースではすでに会員組織が結成されており、横の連携を取りながら民事再生に反対する方針だという。民事再生には債権者数で過半数の賛成を必要とするため、5コースで約2600名といわれる会員のうち、反対に回る会員数次第では民事再生案が認可されるかどうかはまだ不透明だ。

　ただ、「反対すれば、破産になりかねない。それを避けるには現経営陣が残る監督委員方式ではなく、現経営陣を完全にはずしてしまう管財人方式に債権者として切り替えさせる方法になるのでは」（民事再生に詳しいジャーナリスト）。

　昨年秋の決定事項がどう引き継がれたのかについては、旧大株主の西洋フードシステムズも、現経営会社のパシフィック社もいずれも「ノーコメント」。

　本来、倒産したゴルフ場に買収に入るのなら“救済者”となるはずだが、今回のように、倒産していないコースで、いきなり大胆な債権カットを行うと、会員の反発を真正面から受け止めることになる。買収価格は、債務引継を条件に（負債414億円のうち会員の預託金は330億円）、5コースで1000万円以下といわれているが、債務の処理を先送りして安く買えても、管財人方式などにでもなって経営から追われてしまっては元も子もないはずだ。

　ドイツ銀行、ローンスターがともに会員との交渉を甘く見たのかどうかは判らないが、買収する側にとっては、改めて民事再生というフィルターを通す重要性が認識されたはず。とすれば、買収が増えればゴルフ場の民事再生もますます増える、ということになるのかもしれない。