週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
なにしろキャロウェイのボールは、故E・キャロウェイ会長が「一からすべて自分たちで開発する」と豪語して、巨費を投じ、同社が初めて自ら開発した『ルール35』を発表したという経緯がある。にもかかわらず、同社の新ボール『CTU30』には、タイトリストが所有する5つの特許が使用されているというのだから、業界関係者が驚くのも無理はない。「ゴルフボールにおける訴訟を避けるために、私たちは極秘の協定をタイトリストと結んだ」と語るのは、キャロウェイのL・ドーマン広報部長だ。 ここで注目したいのは、この2大ライバル会社が、手を結んだのは、これが初めてではないということ。といっても今回のような用品生産上の問題ではなく、実は、数年前USGAが、例のスプリング効果テストの導入計画を発表したときにも、両者が共同して、テスト導入反対の共同戦線を張っていたのだ。 そして、昨年暮れに突然公表したUSGAのドライバーのクラブヘッドサイズの新規制に対する公聴期限2月19日が迫っている今、再び両者が連絡を密にしていることが、なにやら偶然の一致とは思えなくなっているというわけだ。 USGAの新規制というのは、既報通り385cm3以上の大型ヘッドドライバーを禁止するものと、パター以外のクラブの長さを47インチまでに制限するというもの。これに加え、ボールのテストに関しても、従来言われてきたような実際にボールを打たない室内テストレンジ方式(これだとボール開発の条件が厳しくなる)への一本化をあきらめ、テストに使用するクラブヘッドをチタンクラブにするなど条件を変えての試打マシーンの続投が検討されている。 「今回の発表には、突然で驚かされた。ボールの新テストにしても、クラブの制限についても予想外だった。しかし、クラブに関してはともかく、少なくとも、ボールテストに関して(室内テストレンジ方式への一本化が見送られたこと)は評価したい」とアクシネット(タイトリストの親会社)のJ・ナウマン副社長が語るように、あるいはゴルフボールの開発で、2大メーカーが手を結んだことの影響が、USGAの判断に影響を与えている可能性もまったくないとはいえないのだ。 もっとも、ヘッドの大きさとクラブの長さ制限については、さすがに、様々なメーカーから不評の声が上がっている。たとえば、ヘッド体積が410cm3とのドライバーを発売するゼボ(ZEVO)社にすれば、「まるで、殺人犯の嫌疑をかけられたようなもの。最後の結果が出るまで、誰も殺人者の商品には触れたがらない」(D・ブーン、ゼボ社筆頭副社長)というように、すでに超大型ヘッドドライバーを発売している会社は、死活問題と騒いでいるのだ。 一方、国内のメーカーも、たとえば大型ヘッドを主力としているマルマンでは、「何しろ突然ですからね……。USGAに対しては、2月中旬までの公聴期間内に、メーカーの立場として、すでにお金を出して購入したユーザーがまず保護されるべきだという点を主張、さらにR&Aも同じ規制を強いるようなら、R&Aからはすでに一度承認済みであるクラブであることは主張してくつもりです」(広報担当・大塚賢二氏)と不快感を露わにする。その他、まだ大型ヘッド・ドライバーを発売していないメーカーでも開発段階での路線変更を余儀なくさせられることもあり得るのだ。 タイトリストやキャロウェイにしても、385cm3を超えるドライバーの開発を検討していたと噂されているが、まだ製品化していない分だけ声も小さい。ある意味では、タイトリストやキャロウェイだけにとどまらず、クラブに関しても、ここはメーカーが一体となって共同戦線を張るしかない状況になりつつあるようだ。