週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
この変更については、当初、USGAがメーカー側の反発を甘く見ていたようで、「当初の385cm3という提案は、業界や市場に甚だしい影響を与えるということが、PGAショーを前にして明らかになった」とUSGAのD・ラッジ・シニアテクニカルディレクターが語るように、メーカーサイドから猛反発を食らったのだ。 ある意味では、当初の提案が、クリスマス休暇直前に行われたことから、PGAショーを控えたメーカー各社には、反論したくても時間的な余裕がないとも見られていた。しかし、蓋を開けてみると、たとえば410cm3のドライバーを造ったゼボ社などは「この提案が通れば、ここ1年間やってきたことが無駄になる」(M・ホッフィー社長)ということで1月7日に、USGAに裁判も辞さない考えであることを文書で通達しているのだ。そして、こうした裁判を恐れたのか、USGAは、1月10日に385cm3という提案を修正して460cm3プラス10cm3の許容誤差まではOKという修正提案を出したというわけ。 USGAが470cm3で線を引いたのは、一応これを超えるサイズでは、スプリング効果テストなどで、認定クラブをまだ出していないため。それと大手メーカーのビッグへッドクラブは、皆470cm3以内に収まっているためと推測されている。 しかし、小さなメーカーの中には、500cm3という超ビッグヘッドのドライバーをすでに販売しているところもあり、今回の提案に怒りを隠さない。 「3カ月以上も前からUSGAにクラブを提出しているのに、大手メーカーのクラブがよくて、私たちの500cm3のドライバーが違法だなんて、フェアじゃない。貯金をすべて投資してこのクラブを造ったのに」(ベリーゴルフのオーナー、J・マーレイ氏)といった声が聞こえてくるのだ。 そして、そうした風潮に乗って、大手メーカーもUSGA批判を始めているのだ。これまで口を閉ざしていたキャロウェイも「伝統や慣習に反するというのは、個人的な判断で、線引きをする正当な理由など何もない。線引きの基準をサポートするデータも何もない上に、提案をして22日経って修正するなんてもともと安易な発想としか思えない」(R・ドラポー会長)と批判すれば、テーラーメイドにいたっては、「USGAが、ヘッドのサイズを規制すべきなのかどうか疑問だ」(プロダクトマーケティング・シニアディレクターのJ・ヒューフリック)と、線引き以前のこの規制そのものに対する批判まで出ているのだ。 もちろんオリマーのように、USGAを全面的に支持するメーカーもないではないが、提案を修正したことによってUSGAの弱さを披露、かえってつけ込むスキを与えてしまったともいえるのだ。 ある意味では、今もっとも、USGAが、協力を欲しているのがR&Aということになるのだろうが、こちらの方は沈黙を守ったまま。皮肉なのは、キャロウェイのクラブデザイナーで、ERC、ERCIIを開発したR・ヘルムステッター氏をこの時期に、R&Aの新メンバーとして迎えたことだ。USGAが違法とするクラブのデザイナーをメンバーにするというのは、USGAにとっては、R&Aが完璧に袂を分かったと暗に語っているともとれるのだ。ひょっとしてUSGAが急に弱気になったのも、この辺に原因があるのかも……。