週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
同社のサイトは「アクセス数が月間600万件、訪問者数は同60万件に及び、現在全国542コースのオンライン予約ができる」システムを構築している。ソフトバンクといえば、証券取引の新市場、ナスダック・ジャパン創設に関わったことで知られるが、その系列のイー・ゴルフがスタートさせるのが今回の「ゴルフ会員権マーケット」。従来、会員権は全国に7つある会員権組合の加盟業者を中心に取引されている。加盟業者が顧客から受けた詳しい注文状況がわかる気配表には、顧客の希望する売りと買いの注文価格、注文を受けた業者名が書かれているが、一般には非公開のこの気配表をもとに業者間で価格交渉が広く行われている。一方、公開されている相場表は、実際の注文価格ではなく、売買の中心値を示したあくまで目安にすぎない。それゆえ、顧客が価格設定のプロセスを把握できない不透明なシステムとの批判があるのも事実である。 さて、今回イー・ゴルフが進出しようという会員権取引分野だが、まず“会員権の仲介を自ら行うのではないか”という憶測が飛んだ。株のオンライン取引のように、顧客が直接取引できる市場ができれば、確かに価格決定のプロセスはわかりやすくなるが、そうなると会員権業者は、その存在意義すら失うことにもなりかねない。業界が震撼するのも当然である。 また前出、某経済誌が掲載した「経済合理性に照らせばこれまでのゴルフ会員権はほとんど無価値になる」といった山内社長自身のコメントも刺激的だった。さらに、今回の新事業へは最大手の住地ゴルフをはじめ都内の5社の会員権業者が中心的に協力、23日の業者向け説明会も「実績と信用を基準」(山内社長)に50社に招待状を送っており、その中には、先の関東会員権組合理事会で退任した元理事が多く含まれていたため「組合分裂?」「第二組合設立?」といった噂まで囁かれたのだ。 しかし、最終的にまとまった今回の「ゴルフ会員権マーケット」は、あくまでもサイト上のコンテンツ。具体的に同サイトに掲載されるのは相場表(売買価格の中心値)、相場の動き、その会員権を扱う業者情報などで、実際に会員権を売買する場合は、そこから契約業者のホームページに入り、顧客と業者とで従来通りの個別交渉に。ただ、各業者のHPには実際の売値、買値も出ており、比較判断することは可能になっている。 「我々はゴルファーと会員権業者の橋渡し役。従来の業者の業務を否定しないし、自ら仲介する予定もない。会員権取引には、名義変更や保管業務など業者に頼る部分も多く、その立場を尊重している」(山内社長)。 実際、説明会には44社が訪れたが、当初の“過激性”が薄れ、ホッと胸を撫で下ろした業者も多く、うち17社はその場で参加の意志を表明したが、「入会金5万円、月額基本料2万円、それに掲載料金を加えても、新たなチャンスにつながれば安い広告代」「業者を限定したということ以外、既設サイトとの違いがわからない」といった声も聞かれた。 もっともイー・ゴルフに協力した5社のひとつで「とりあえず」参加を表明した桜ゴルフの佐川八重子社長は「ネット上でのオープンマーケットは、ゴルフ場から手数料を頂くシステムになっていない現状では、過激な価格競争による共倒れ、さらに組合の機能との考えから時期尚早で危惧を感じている。本来、こうした議論は一部業者だけでなく、業界発展のため組合を中心にやるべきものでは」と指摘する。 これについて、関東会員権取引業組合の阿部文郎理事長も、「イー・ゴルフの今後の展開も含め、真意がどこにあるかわからない以上、コメントしようがない。ただオンライン化については、組合としても強力に推進していく」とする。 結局、当初の革新的な提案も、会員権業者の危機感からくる抵抗に尻すぼみになった格好にもとれるが、今回の新システムの旗揚げが、低迷する会員権業界の不透明感の払拭、さらには会員権への潜在需要の掘り起こしにつながることを願いたい。