週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
上総モナークでは退会希望会員に対しても98パーセントカットを要請しているが、民事再生で株主会員制移行もなしでプレー継続会員の預託金100パーセントカットは、小幡郷GCなどの昭和総合開発グループ、エヴァンタイユGCなどで例がある程度。残留会員については、カットせずに10年程度の据え置き後、抽選償還というケースが一般的だ。 同社の小泉和夫社長は「会員の皆様に多大な損失を被らせるお願いとなり、大変申し訳ないと思っている。ただ、将来も預託金まで返せるだけの利益を出せる見通しはない。これ以上嘘をつくことはできない。株主会員制への移行も考えたが、相場との兼ね合い、会員間の額面の差を考えると公平さを欠くと思い断念した」という。 同コースはかつてゴルフ場の乗っ取りで名を馳せた、金融会社・アイチの森下安道社長が、J・ニクラスに設計を依頼し、多額の資金を投じて建設した、唯一自前の豪華コースだ。 アイチの経営破綻とともに、現在の小泉和夫社長が経営するテクノ・コーポレーション(株)(後に前出の現社名に変更)に経営が移ったのは平成7年10月。実に164億円でアイチから買収、約800名の会員から集めた109億円の預託金もまるまる引き継いだ。 「当時はまだ会員権相場が750万円程度で、償還が迫っていた預託金額面は800万円~1000万円。経営努力でゴルフ場の価値を高めれば、相場は上がり、償還請求は来ず、十分経営は可能と踏んだ。それが甘い見通しだったことは後々思い知った」(小泉社長)。 ちなみに、同コースは以前の会社名が似ていることから、業者の間でさえ理事長・大朏直人氏が社長を務める店頭上場企業・テクノエイトの系列だと誤解されているが、人的にも資本の上でもまったく無関係。大朏氏と小泉氏は友人関係にあるだけなので、テクノエイトに資金面での支援を要請することはできない。また、野村証券グループのノンバンクが深く関与、債権の一部を譲り受けたローンスターグループがコースを競売したことが、今回の申立の引き金にもなった。 しかし、「あくまで当社の意思で買収し、融資をお願いしたのに返済ができなかった」(小泉社長)ので、野村証券グループに支援を求めるなど無理な相談、ということのようだ。 今回の100パーセントカット要請について、ゴルフジャーナリストの田野辺薫氏は、「実現性に疑問が残る抽選償還案が多い中、一見合理性があるように見えるが、償還金額を償還期当時の相場通りにするなど、工夫の余地はあったはず」だと指摘する。 優良企業が買収してくれたと思っていた会員にとっては寝耳に水だろうが、アイチ破綻の際にトラブルがなかっただけに、3月27日の再生計画案提出期限までに会員がどう出るか、注目される。