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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 2/26号
2002年更新
業界激震! 国内最大手のスポーツ振興が
RCCから会社更生法を申請された事情
 ゴルフ場業界に、またしても大激震。国内30コース、海外6コースを展開するゴルフ場経営大手のスポーツ振興(株)が2月4日、事実上経営破綻した。負債総額はスポーツ振興本体で2044億円(うち預託金679億円)、グループ全体では2800億円。会員数はグループ全体で約6万5000人。ゴルフ界では97年の暮れ、負債総額約3455億円、会員数7万2000人で、日東興業が行った和議申請に次ぐ規模のものとなった。

 事の発端は1月28日、整理回収機構(RCC)が、大阪地裁に対し、スポーツ振興本体の会社更生開始の申し立てを行ったこと。RCC側の説明によると、「申し立ての趣旨を理解した」として同社自身も2月1日に自ら会社更生の申し立てを行った。これを受け、大阪地裁は4日、会社更生法に基づく保全管理命令を決定。これにより保全管理人に田原睦夫弁護士が就任するとともに、グループの総帥・木下俊雄社長が辞任。同日、関連会社17社について、会社更生開始の申し立てを行った。

 会社更生に踏み切った理由について、RCCは“スポーツ振興は海外投資の失敗で600億円以上の損失を発生、さらにゴルフ場開発の失敗で金融機関を中心に964億円の借財を抱えるようになった。また過去4年間に40億円の預託金を返還しているものの、今後2年間で、少なくとも22億円の預託金返還時期が来るが、返済原資がまったく見当たらない”としている。

 昨年からRCCを含む金融機関への返済も困難になっていたことから、「いずれ経営破綻、営業停止にもなりかねず、放置すれば取引企業の連鎖倒産や、従業員の雇用の維持が困難になることに加え、会員が多数存在することから社会的混乱も避けがたい状態にあり、多数の会員を権を適切に処理するためには危機感、責任感の乏しい現経営者を排除し、会社更生法がベストと考えた。ここに至り現代表者も経営責任を認め、全個人資産の提供等を約束し、自らも会社更生法の申し立てをされたものである」(RCC・鬼迫明夫社長)としている。

 RCCが、債権者として会社更生法の適用申請を行ったのは、大宝塚GC、レストランのシャロングループに次いで3件目。旧経営者を排し、会員のプレー権を確保することで新会社として再生させるとの手法は、大塚GCの方式を踏襲したものだ。

 スポーツ振興グループは、昭和34年、オーナーの木下社長が職場のスポーツ普及団体として、「スポーツ文化協会」を設立。翌年、休眠中だったコトブキ無線を買収し、36年にスポーツ振興と商号を改めた。その後、昭和37年に川西GC(兵庫)を手がけたのを皮切りに、岬GC(大阪)など関西で着実に実績を重ね、昭和45年には大厚木CC(神奈川)で関東にも進出。その後も自らゴルフ場開発を手がけるとともに、経営難に陥ったゴルフ場を再建させるなどして、最大手の1社にまで成長していった。

 また、昭和62年には、来週開催のWGC---アセンチュア・マッチプレー選手権の舞台にもなっている米国カリフォルニアの有名コース、ラコスタ・リゾート&スパを買収したが、昨年すでに売却している。

 木下氏は昨年、ゴルフ場経営者の集まりである(社)日本ゴルフ場事業協会の理事長にも就任。名実ともに業界のリーダーでもあったわけだが、一方で大衆コース路線を歩んできたために、つねに大量会員の噂が囁かれてきたのも事実。実際、大厚木CCが桜コース18ホールを増設した際、追加預託金を会員に要求。それが裁判沙汰に発展、それまで公表されていた会員数を大きく上回る、約6000人の会員の存在も明らかになったこともある。

 また、バブル崩壊後には、各コースの単独会員権とは別に、グループコースで使える共通会員権によって資金を捻出してきた事実もあり、ここでも実際の会員数に疑問の声も上がった。

 近年では、グループの象徴的コースであり、男子ツアーのつるやオープンの会場でも知られるスポーツ振興CC(兵庫)で、平成4年に約75億円をかけて新築したクラブハウスの費用回収が補充募集ではままならず、同10年に会員に対し200万円の融資協力を要請、会員の反発に加え、経営不安説が噂され、すぐに撤回するという珍事もあった。開場年が古いコースが多く、預託金の額面は小さいが、長期にわたって額面割れを起こしている会員権相場の状況や、比較的大量の会員を抱えていることもあり、大手とはいえ償還圧力に耐えられるか、との指摘があったことは事実だ。

RCCの強引な手法を疑問視する声も……

 ただ、今回のRCCの会社更生法申請に対し、まったく疑問の声がないわけではない。RCCの発表では、スポーツ振興本体について平成8年に売上高126億円、営業利益30億円を記録するも、12年には売上高90億円に減少。しかしながら、14億円の経常利益は確保している。また、本体の2044億円の負債総額のうち、破綻金融機関からRCCにわたった債権はわずかに72億円。これに将来的に預金保険機構からRCCに移る委託債権95億円を加えた167億円は、金融機関債権965億円のほんの一部にすぎないのだ。

 ある事情通が言う。「昨年暮れからRCCとスポーツ振興との間で交渉を重ねてきたが、スポーツ振興としては自主再建、最悪でも民事再生法という線で交渉を進めてきたと聞いている。しかし、それが会社更生法となり、強制的にオーナー排除という結果になったことは、両者の感情のもつれと思われる」

 実際、RCCが記者会見で配布した資料には「代表者は一族で多額の報酬を得ていた」「平成11年には4億円をかけて自宅を新築するなど危機感・責任感に乏しい」など、木下氏個人の資質について、感情的とも思える記述も目立つ。

 ゴルフ場問題に詳しい、ある弁護士も「破産の恐怖を会員に煽り、せめてプレー権だけは守るという大義名分で、気に入らない経営者を追い出すというスキームが、はたして準国家機関ともいえるRCCの取るべき態度だったかは疑問。ゴルフ場破綻が先にあったわけではなく、金融機関の破綻が先にあって、その債権を引き継いだのがRCCだ。だとすれば今後、このようなスキームが横行することは、ゴルフ場経営者だけに責任を負わせ、ゴルフ場を錬金術の舞台としてきた金融機関の責任を曖昧にするものではないのか」との疑問を呈す。

 実際、スポーツ振興には破綻金融機関からの出向者も多いとされ、同グループ自身が会社更生法申請を追随したことについても、「シナリオはRCCと銀行マンによって描かれたもの」(前出・弁護士)との穿った意見もあるほど。

 これらの点について、スポーツ振興では、「今後については保全管理人との打ち合わせを進めており、コメントする段階にはない」(同社総務部)。また、保全管理人も「現時点でなんら話せる段階にはない」。木下氏が理事長職を務めていた(社)日本ゴルフ場事業協会では、「2月1日に退任届けが出されており、現在は副理事長が代行している。早急に緊急理事会を開く予定だが、業界一丸となってこの危機を克服していく以外にはない」(事務局)としている。

 パブリックの多い西武グループを除くと、日東興業に次ぐ規模で業界を引っ張ってきたスポーツ振興の会社更生法申請は、会員6万5000人のみならず、業界が受けたダメージは大きい。

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