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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。 内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。 |
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週刊ゴルフダイジェスト 2/26号 |
2002年更新 |
ウッズが初めてナイキのクラブを使用も
「まだテスト段階」で市販モデルとは別物
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先のぺブルビーチプロアマで、遂にタイガー・ウッズがナイキのドライバーを使用、アメリカのマスコミが騒然となった。
同社の看板スターであるウッズだが、ボールやウェアは使用契約を結んでいるものの、ことクラブに関しては「彼が求めるレベルがかなり高いため現在試行錯誤の段階。まだ彼が満足できるものができていない」(クラブビジネスディレクターのマイク・ケリー氏)という現状。
先の米PGAショーにおけるナイキの発表でも、タイガーが同社のクラブを使用し始めるのは今年の末になるという見解を示していた。それだけに、予想をはるかに上回るウッズの早い時期のドライバー使用が様々な憶測を呼ぶことになったのだ。
タイガー本人に言わせると「若い選手たちに合わせるためにも、もう少し飛距離がほしかったんだ」ということで、S・ガルシアやC・ハウエルら若手に負けないためにも、飛ぶクラブがほしかったということなのだが、どうも額面通りに、受け取れないものがある。
というのも、このドライバー、PGAショーで発表された3種類のモデルとは異なっている上、スペックが、これまで約3年使用し続けているタイトリストの975Dとまったく同じだからだ。ロフト7.5度に43.75インチのX100のスチールシャフトをつけるなど、975Dと違うのは、ヘッドがわずかに大きいのとフェース面がわずかに薄く、ベータチタンを使用していることぐらい。つまり、ウッズがクラブを替えやすいように、とりあえず作られたもので、「生産準備を急いで入るが、市場にはまだ出せる段階ではない」(K・デブリン、グローバルスポーツマーケティング部ディレクター)というドライバーなのだ。
ナイキのドライバーといえば、すでにD・デュバル、J・クック、M・キャンベルらが使用しているが、それでもインパクトに欠けるものがあった。というのも、クラブ業界へは新規参入のナイキとっては、トッププロの使用にも耐え得る技術があることをまず前面に打ち出したいはず。だとすれば、タイガーが使わなくては話にならない。そのために彼が使用できるプロトタイプのクラブをとりあえず作ったと見られているのだ。
というもの、すでにデュバルが出演するTVコマーシャルや印刷広告が作られているが、今年は、中小メーカーの年間売上げを凌ぐ百数十億円の広告予算を計上しているだけに、ここはウッズに出演してもらわないことには、ナイキの目論見が外れることになってしまうからだ。
そのため、ペブルビーチでは、初日2アンダーと出遅れた(最終的には12位)際も、タイガーは「ドライバーのせいではない。いい場所にボールを落とせたが、それを(スコアメークに)に活かすことができなかっただけ」と、わざわざドライバーを弁護するという念の入れよう。
もっとも、「最初にボールを使い始めたとき同様、今はまだテスト段階」(前出・デブリン氏)とかで、今後もそのまま使用し続けるかどうかは未定だ。
しかし、ボールのときと同様というのなら、一昨年、テストといいながらボールをすぐに使用し始め、全米オープンに記録的なスコアで優勝、“タイガースラム”の発端を作っている。それを考えれば、コース改造で距離が伸びたオーガスタ対策の兵器として考えていることも十分にあり得えそうだ。
カジュアルブランドがなぜ上級者モデル?
そんな話題を呼んだペブルビーチプロアマが終わった直後の4日、タイガーが使用したクラブとは違うが、その注目のナイキ・ドライバーの国内販売が、ナイキジャパンから正式に発表された。
改めて紹介するが、国内で3月中旬に発売が予定されているのは「ナイキ ツアーフォージドチタン350ドライバーXバージョン」とD・デュバル使用の「同275ドライバー」の2種類のドライバー。後者は当然、競技志向の上級者向け。また、前者も中~上級者向けの日本仕様のモデルで、後者のヘッドの反発係数は「0.83に近い」そうでUSGAの基準値を優に超えているという。
ちなみに価格はオープンプライスだが「卸値から類推すると店頭では6万円前後になる……」とナイキジャパンの小森賢二氏(ゴルフディビジョン・ゼネラルマネジャー)。
この価格設定は、やはり同じ中~上級者層に昨年ヒットしたテーラーメイドの300シリーズを睨んでのことのようだ。そして、米国での発売から約半月遅れで、3月中旬には全国700店前後のショップ、百貨店の店頭に並ぶ予定という。ただし、今後の売上げやシェアの数値目標はなぜか公表されなかった。
ところで、ナイキ・ブランドといえば、一般に若者世代のカジュアルなイメージがあるが、今回は上級者向け。また、アメリカで今年4~5月に発売が予定されているアイアンも、キャビティではなく、マッスルバックのいわゆる上級者モデル。これでは、ナイキ・クラブの発売を心待ちしていた層との間にギャップがあるのでは?
「ナイキはこれまで他のスポーツ用品でも、一流選手に製品の性能を証明してもらい、それから一般に普及させてきました。クラブも、まずトッププロの使用で技術力があることが認知された後、年内とはいきませんが、いずれアベレージ向けのクラブを売り出すことになると思います。その研究開発はすでに進められているはずです」(同社スポーツマーケティング・ディレクター、吉澤恒男氏)
その開発だが、ナイキでは昨年2月にクラブの設計開発で数々の実績を誇るトム・スタイツ氏が設立したインパクト・ゴルフ・テクノロジーズ社を買収。同氏を中心にオリジナルクラブの開発を進めている。
もう一点気がかりなのが、ナイキが有していない生産ラインに関して。実はそれについても、今回出席した前出のマイク・ケリー氏が、「ブリヂストンスポーツとの提携により、製造をコントロールする態勢がとれるようになった」とし、今回のクラブもボール同様、ブリヂストン社のOEMであることを明らかにした。それゆえ製造に当たっては、同社のノウハウが加味される可能性もある。
ということで、国内向けの新クラブは日本人ゴルファーのキャラクターとともに、市場の特異性も十分に考慮されたクラブのようだ。ともあれ、今後の売れ行きは、タイガーが使用するかどうかに大きく左右されることだけは間違いなさそうだ。
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