週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
ちなみにこのコース、正確には『わき』と読む。経営会社の興亜レジャー開発は、株式の8割を興亜石油が、そして地元・山口県玖珂郡和木町が残り2割を握る第三セクターだ。 現在会員に提示されている条件は、退会・継続に限らず一律50パーセントカット、残る50パーセントは計画確定後わずか2カ月で一括返済、その上、会員権自体は預託金の表示のないものに差し替えてくれるというのだ。興亜レジャー開発の負債は総額で91億円だが、このうち預託金は約70億円。従って、半額の35億円を一括払いし、残る35億円はカットされるが、残留会員は市場での売却が可能なプレー権のみの会員権がもらえるのだ。その市場での相場次第では、かなりの額を取り戻すことができることになる。 従って、「会員が退会を希望する理由がない」と申立代理人の服部弘志弁護士。退会すれば、このプレー権のみの会員権を受け取れなくなってしまうからだ。 これほどの好条件は、昨年、ザ・オークレットGCで、日本ダンロップが預託金債権を全会員から額面で買い取り、総額30億円程度の負担を引き受けた例がある程度で、一般的には極めて異例だが、今回もまた親会社の体力あってこその好条件と言えそうだ。 興亜石油は大株主であるほか、興亜レジャー開発に対してある21億円の貸付金を全額放棄した上に、今回の会員への支払い原資となる35億円についても全額融資し、このうち20億円は即座に債権放棄をするという。つまり、総額41億円の債権放棄を実施、今3月期は20億円程度の赤字になる模様だ。 先頃、上場会社の大日本土木系列のグアムインターナショナルCCが破産になったばかり。興亜石油は昨年秋に日石三菱の完全子会社になったため、現在では上場廃止になっているが、同じ大企業でも随分違うものだ。 興亜石油がこれだけの負担を覚悟したのは、「コースの立ち上げから関与してきたので、できるだけのことをしたかった」(興亜石油・広報担当)ため。 今回の民事再生申立の直接的な引き金は『据え置き期間内に退会する場合は預託金の3割を放棄すれば7割を返還する』ことが規約に盛り込まれているが、その規約の凍結解除が今年3月に迫っていたことにある。 「3月になれば7割返還をしなければならず、さらに平成15年には据置期間そのものが来るため、早晩何らかの手当てをする必要に迫られていた。償還期限が来てから慌てて対策を考えると、混乱して会員間で不公平が生じる。期限到来前に策を講ずることで会員間の平等を確保できたと思う」(服部弁護士)。 しかし、何と言っても今回の好条件提示は親会社・興亜石油の体力抜きには語れない。 「上場廃止直前の自己資本は実に360億円を超え、今3月期に20億円程度の赤字が出ても、一過性の赤字に過ぎない。さすがに日本ダンロップのように全額を買い取ることまではしなかったが、新会員権の上昇期待も可能な範囲なので、まずはよしとすべき範囲」(金融ジャーナリスト)という。 懐の厚い『親』がめっきり減り、大企業系列のゴルフ場が安心だという神話はとっくに崩れ去っているだけに、数少ない『頼りになる親』のありがたみは一層際立って見えるのである。