週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
舞台は兵庫県の川勢CC(現・東海カントリー倶楽部)。原告は同CCの会員権を、平成10年12月から翌11年12月までに購入した会員142人。被告は川勢CCと、このとき仲介に入った大阪日日新聞社のゴルフ事業部だ。大阪地裁の1審判決では、川勢CCと大阪日日新聞社に預託金相当額の損害賠償の支払いを命じている。重要な事実を伝えずに会員権を売ったことが不法行為にあたるので、会員権の売買を取り消す形で、受け取った代金相当額を賠償せよ、という内容だ。 川勢CCは川西ロイヤルGCの名称で、昭和62年4月に開場。当時の経営会社は大阪日日新聞社系列のケイジーシイ。その後、同社の経営悪化に伴い、平成9年6月に系列コースごとに分社化され、同コースは川勢カントリー(株)に経営が移り、コース名も川勢CCに変更している。 登記を見ると、クラブハウスにはいくつもの抵当権が設定され、10年1月には債権者が競売を申立て、その後は税金関連の差押えがいくつも付くなど、紆余曲折があったことを窺わせる。 11年7月にはコース敷地の約4割が、五社興産という会社に落札されているが、原告らが会員権を購入した時期はまさに競売手続の真っ最中。中には落札まで済んでいるのに購入してしまった人もいたわけだ。 川勢カントリー(株)は、その後12年10月、営業権と設備などを譲渡する形で五社興産と和解、現在では東海CCとして営業し会員もプレーができている。 故に大阪日日新聞社側は、プレーができているので会員に損害はない、という主張を展開しているのだが、五社興産は預託金返還債務を引き継いでいないので会員の権利は不安定なまま。そこで今回の判決となったようだ。原告代理人の相内真一弁護士は「仲介業者にも賠償責任を認めた判決としてはおそらく全国で初」だと言う。 一方の大阪日日新聞社は「すでに控訴手続き済み」(大阪日日新聞社側の窓口・デイリー社)なので、これで確定というわけではない。 大阪日日新聞社は12年8月に新日本海新聞社に身売りしているのだが、その際、旧ゴルフ事業部だけは分離し、身売りの対象から外している。デイリー社はその旧ゴルフ事業部の事業を引き継いでいる。 預託金が返ってくるのかどうかという話になると、一定量以上の返還請求が来たら返せないという事情は程度に差はあるにしても、どこも似たり寄ったりだし、今回のように裁判で勝てるとしても預託金を取り戻せるかどうかは別の話で、トラブルのないコースを買うに越したことはない。結果的にプレーができているかどうか以前に、やはり係争物件は避けておいたほうが無難であることには違いない。 それでは一体どうしたらトラブルのないコースかどうかを判断できるのだろうか? 「少なくともコースの登記簿謄本を確認してみることが一番確実」(係争問題に詳しいジャーナリスト)だという。しかし、ゴルフ場の敷地は広く、実際に現地の法務局に足を運んで登記簿謄本を確認することは素人にはなかなか難しい。 だが、「登記簿謄本を取ってくれる代行業者もいるし、クラブハウスと、そのクラブハウスが立っている敷地だけに限定して依頼すれば、そんなに難しくはありません」(同)。 昨今は、会員の知らないうちに経営会社が替わっていることもよくある時代。これから会員権購入を考えるなら、少なくとも現時点でトラブルがないかどうかぐらいは調べておいたほうがいいだろう。