週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
90年代後半に入って危機を迎えた韓国経済は、97年のIMF融資を契機に大胆な改革を断行。いったんは大幅なマイナス成長にあえいだものの、日本とは対照的に99年からは急速に回復基調に。それとともにゴルフ人気が再燃した。 そのため、現在韓国内には125ほどのゴルフ場があるが、平日でもメンバー予約でいっぱいの状態、ビジタープレーは基本的に困難という。 当然、会員権の需要は強まる一方。経済危機の際にはいったん半分にまで落ちた会員権相場も、今や以前を上回るまでに回復した。相場価格をみると、1億ウォン(約1000万円)を超えるゴルフ場が約30コースもある。中には5000万円近い価格が提示されている人気ゴルフ場もあるが、実際に売りに出される会員権がないので、気配値はまだまだ上がるはずだ。 高騰の理由は、もちろんゴルフ場の絶対数が少ないから。日本の約4分の1に当たる約10万平方キロの国土に、400万人ほどのゴルファー(総人口は約4700万人)を擁しながら、125コースしかない。日本の場合、1300万人のゴルファーに2200コースだから、ゴルファー比では700コース、国土面積では550コースにまで増えてもおかしくない勘定だ。 「現在建設中のコースは30ほどありますが、需要の大きなソウル周辺では、用地の面で飽和状態に近づきつつあります。今後は観光地を中心に、地方でのニーズの高まりが待たれます」と説明するのは、『ゴルフダイジェスト・コリア』(米誌系)の日本支社長、黄鐘吉(ファン・ジョンギル)氏。 黄氏によれば、ゴルフはレジャースポーツとして韓国人気質に合っており、そのため接待で利用されることも多いという。ただし、儒教の国だけあってマナーには厳しい。実は、韓国では今年から、ゴルフ場での喫煙が禁止され規制ができた。理由は、タバコの投げ捨てが原因で山火事が引き起こされたこともあるが、年長者や接待した人を前にしての喫煙はマナー違反という意識が強いために取られた措置だそうだ。これもゴルフ人気の影響のひとつかもしれない。 だが、こうしたゴルフ人気に、有識者の間からは憂慮する声が上がり始めた。つまり、一時期の日本のような「ゴルフ場バブル」になり、本当にゴルフを楽しみたいという人を遠ざけるような状況を作ることを怖れているのだ。実は黄氏も、韓国内に向けて警鐘を鳴らすひとりだ。「韓国では98年のパク・セリの大活躍をきっかけに、ジュニアへ育成の必要性が叫ばれるようになり、実際にジュニアに開放するゴルフ場が増えています。また、ゴルフ場利用税の税率が下げられたり、従来あった特別消費税が廃止されるなどの成果も出てきました。今は健全なスポーツとして、大衆化に動きだすいいチャンス。バブルになって富裕層しか遊べなくなる前に、大衆化を実現したいですね」 その道のりは決して楽ではなさそうだが、まずは韓国ゴルフが世界に通用する競技として認知され、国民的なバックアップを得るようにしたいという。スポーツに熱い国・韓国のゴルフの進展に注目したい。