週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
F・カプルスがぶち上げたこの新ツアーは、37歳から55歳の歴代メジャー優勝者を対象に、来年3月から6月までの間に7試合を開催するというもの。1試合の賞金総額は、最低200万ドルで、優勝賞金は40万~50万ドル。最下でも5万ドルが保証されるという豪華さだ。しかも、開催コースはメリオン、ウィングドフットといった名門コースに限るというのだから、注目を集めないわけはない。 もともとは昨年、カプルスが長年付き合いのあるTVプロデューサーのT・ジャストロウ氏に声をかけたことで始まったものだ。まだ構想段階ということで、関係者たちはコメントを控えているが、先頃、TV局のフォックス・ネットワークとの放映契約の大筋がまとまったことから、にわかに具体化してきているのだ。ただ、問題はPGAツアーの意向だ。 「まだ詳細がわからないので、コメントできない。しかし、既存の試合にマイナスにならない限り、選手たちに利益があるのならサポートしてもいい」とPGAツアーのフィンチェム・コミッショナーが話すように、オフシーズンならともかく、他の試合がTV中継されている週には、新しい試合の開催は認めないというのが基本姿勢といえる。 かつて「PGAツアーは私のアイディアを盗んだ」と語ったのはG・ノーマンだが、これは、94年にワールドツアーの構想を、今回と同じくフォックス・ネットワークと組んでぶち上げ、その後、形を変えて現在のワールドゴルフ選手権(WGC)がPGAツアー主導で開催されていることについて言及したものだ。 ノーマンのワールドツアーは、結局、PGAツアーが選手たちに「ワールドツアーに出場すれば米ツアーのメンバー資格を失う」と警告を発して潰したが、状況は当時と変わっておらず、基本的には、米ツアーメンバーの内規で、北アメリカで米ツアーと重なって開催される試合に出場することを禁止されていることからすると、選手は米ツアーメンバーの資格を放棄しなければ、この「メジャーチャンピオンズツアー」に参加できないことになるのだ。 とはいっても、ノーマンのワールドツアー構想と異なるのは、出場選手の年齢が37歳から55歳と限られている点。ウッズら若手の台頭が著しい米ツアーにとっても、人気絶頂の選手たちが引き抜かれる可能性も少ないし、選手にとっても、40代ともなれば、実力のある若手がゴロゴロいる今の時代では、なかなか試合に勝てなくなっているのも事実。また、それに合わせて自然と出場試合数も減ってくるわけだから、この新ツアーに参加してメンバー資格を失ったとしても、さほど痛手にはならないともいえる。 実際、ノーマンやファルドなどは、すでに年間最低15試合出場の規定をクリアできず、メンバーの資格を失っているのだが、それでもメジャー4試合に加え、WGC3試合とプレーヤーズ選手権、それにスポンサー招待で年間5試合まで出場が認められているために、知名度のあるメジャーの勝者には、ツアーメンバーの資格にさほどこだわる必要がなくなってきているのは事実である。それだけにC・ストレンジのように「年齢的には参加資格があり、前向きに検討したい」と言った声もチラホラ出てきているのだ。 新ツアー側では、この4月中旬にも、該当選手に参加要請を行い、6月初旬には参加選手のリストができるようだが、とにかく参加選手がいてこそ、新ツアーも成立するわけで、6月までは、スポンサーがいても実現の決定もできない状況。 レギュラーツアーにすれば、D・ラブIII、V・シン、J・デーリーなどを失うわけにはいかないし、T・ワトソン、L・ネルソン、F・ゼラーらはシニアの看板スター。それだけに、スンナリと事が運ぶとは思えないが、逆にこうしたビッグネームが名を連ねているからこそ、新ツアーがエキサイティングになるともいえる。しばらく、新ツアーの動向から目が離せなくなった。