週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
「タナカが出演しているCMは2種類あり、1本はE・エルスなど他の契約プロと一緒に撮ったもの。もう1本はタナカひとりで出演するもので、米ツアー挑戦の抱負を日本語で語ってもらっている」(米テーラーメイド、M・マーティング広報部長)とかで、なんと日本語のまま、字幕入りで放映されているのだ。 米国で日本人のテレビCMといえば、イチローのマリナーズのCMを思い出すが、こちらのほうは昨年のチーム仲間との共演から、今年はイチローだけの個人出演になったものの、如何せんワシントン州を中心にしたローカルなもの。一方、田中のほうは、個人とグループのCMが一気に全国放送されているのだから、ことCM面での“格”は田中のほうが上ともいえる。 そもそも、スポーツ界に限らず日本人が米国の全国ネットのCMに出演すること自体が珍しく、過去にもオノ・ヨーコや小錦など5本の指で数えるくらい。それが、いきなり日本語で田中が出ているのだから話題になるのも無理はない。 それにしても、なぜ、外国人で、なおかつ昨年Qスク-ルを通ったばかりで米ツアーではほとんど無名の田中をCMに起用したのだろうか? 「タナカを採用したのは、まず第一に我が社の世界的なイメージにフィットしているから。それにタナカの進歩は目覚しく、ある意味ではこれからのタナカに賭けた部分もある」(前出・マーティング氏)とかで、米国にとどまらず、カナダ、韓国でも同じCMが放映されている。 しかし、カナダでは自国のM・ウィアー、ヨーロッパではエルスと、各国、あるいは各ツアーの顔ともいえる選手がCMに出演していることを考えると、テーラーメイドの田中に対する期待度の高さがうかがい知れよう。 そもそも、アメリカのゴルフファンが、日本人選手のことを知るチャンスは皆無に等しい。トーナメント中継でも、やはりお国びいきで、外国人選手は、優勝争いに加わってこない限り、放映されるチャンスは少ないのが実情だ。しかも、放映される際も、ショットやパットの瞬間だけといったケースが目立つ。加えて、英語のインタビューに答えることができないために、まれに日本人プレーヤーがテレビカメラの前に立つことがあっても、ほんの一言二言だけ。 それだけに、今回のCMで30秒まるまる語る田中は、知名度の点では、他の日本人プレーヤーに比べ、一歩抜きん出たのでは。 気になるのは、このCMに対する反響だが、「まだこのCMが流れて1カ月ちょっとで、一般の反応はわからないというのが本音。しかし、製作にあたっては、社内での反対はまったくなかったし、タナカのCMを観て、少なくとも社内では誰もが強い好感を持っている」(前出・マーティング氏)そうだ。 撮影したのは(去年の)Qスクールに受かった直後で、田中本人に言わせると、「朝の6時半から夜の9時まで、丸一日かかりました。あれだけ時間をかけたのに、流れているのはほんのちょっと」と残念そうなのだが、日本人ゴルファーがアメリカのCMに出演するのは初めてではないかと聞くと「うーん、でしょうねえ。ええ」と、嬉しそうに笑顔で答えている。 CMの中では“世界のトップに立つためにアメリカにきた”と語っている田中。知名度のほうは、このCMでトップに少し近づけそうだが、あとは実力の面でそれを証明していかなくてはならない。これまで田中は、今季7試合に出場して3試合予選落ち。最高の成績がデビュー戦のソニーオープンでの17位タイというものだが、シーズン本番に入り、これからの田中に期待するのは、日本のファンばかりではなくなっているようだ。