週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
NOを突きつけたのは、旧・愛和GC新広島Cの会員35名、突きつけられたのは、新たに運営会社となった(株)ワシントンリゾート広島である。 一般に競売でコースを落札した新所有者は、預託金を引き継ぐ義務も、旧来の会員にプレー権を与える義務も負わない。しかし、コースの敷地やクラブハウスなどの所有権は元のままなのに、預託金は引き継がず、単に「運営委託を受けた」と称して従来の経営会社とはまったく別の会社が登場するケースは最近ポツポツと出てきてはいる。しかも会員に対し、新たに追加協力金を求め、支払わない会員には倶楽部競技に出場させない、ハンディを出さない、追加プレーフィを払わないとプレーさせない等のペナルティを課すというのがお決まりのパターンだ。 旧・愛和GC新広島Cは愛和グループが経営していたコースのひとつだが、平成12年10月、突然(株)ワシントンリゾート広島に経営を委託、コース名も『広島高原CC』に変更した。その直後に会員に対し、コース改良のための建設協力金を求める文書を送付。具体的には、30万5000円の協力金(内訳は登録料10万円、預託金20万円、消費税5000円)を支払った会員には、旧預託金証券と引き替えに新証券が発行されるが、そこには旧預託金の額に加え、追加で支払う20万円も上乗せした金額が記載されている。この追加協力金を支払わない会員には、やはり先述のペナルティが課せられるのだ。 「預託金を預かって、会員にメンバーとしてプレーする権利を提供するという契約は、会員とゴルフ場経営会社の1対1の契約。そこへ別の第三者が登場して追加金を要求し、断ればプレー権を侵害するということは、契約の相手方である会員の承諾もなく一方的に契約内容を変更することになるので、裁判で争えば会員側が勝てるが、実際に法廷闘争に持ち込まれることはほとんどない」(ゴルフ場問題に詳しい熊谷信太郎弁護士)。というのも、ペナルティとして課される追加プレーフィが1ラウンドにつき2000円程度と少額で「訴訟費用と比べると割に合わない」(同)ためだ。今回、敢えて提訴に踏み切った理由について、原告のひとりで『新広島CC会員を守る会』の代表でもある入江正樹氏は、「今、建て直さないと、さらに被害が広がると考えたから」だと主張する。 コース側は、法的に弱いことを承知しているためか、予約の段階で追加プレーフィを払わないというと予約を取らないが、予約なしで行ったりすると、2000円の協力金を支払わなくてもプレーできてしまうケースもあるなど、対応もバラバラ。会員の組織化を積極的に進めているためか、入江氏はプレーの予約も拒否されている。 9000人とも1万人とも言われる同クラブの会員のうち、どれくらいの会員が新証券への書き換えに応じているかは不明だが、昨年10月、愛和グループのオーナー・種子田益夫氏が東京商銀事件に絡んで逮捕され、年末には、敷地やクラブハウスを所有する旧・経営会社、(株)新広島CCが銀行取引停止処分を受けて倒産。これを受け、今年2月には、ワシントン側から「旧会員様のプレー権、預託金の請求権、売買する権利等が消滅する可能性があります」とし、再度新証券への書き換えを呼びかける書面が送付されている。 しかし「新証券に書き換えても、旧預託金分については(株)新広島CC、20万円については(株)ワシントンリゾート広島と記載し、ワシントンは前の預託金を引き継がない上に、自動的に返還請求期限が15年も延長されてしまう。コースは1番抵当を付けている債権者が競売手続きをすでに取っており、いつ誰の手に渡ってしまうかわからない状態。将来にわたり会員にプレー可能な環境を提供出来る保証はないのに、金集めするワシントンリゾート広島の姿勢は許し難い。調停で話がつけばと思い、3カ月ほど遠回りをしたが、この訴訟は絶対に勝つ」と入江氏。 なお、ワシントン側は「訴訟中なのでコメントは控えたい」としている。