週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
リョービはもともとダイカスト(精密鋳物製造)や印刷機製造が主力のメーカーで、同社がゴルフ用品に参入したのは83年。釣具(2000年にすでに事業譲渡)に続いて、事業の多角化を図るのが目的だった。 以降、長らく不採算部門となっていたが、97年に前出の「ビガロスメディア」を発表すると、その打ち易さが受けて大ヒット。99年には弊社の「クラブ・オブ・ザ・イヤー」をユーティリティ部門で獲得している。また、一時流行った長尺ドライバーが、最近になって短くなる傾向が顕著だが、同社はいち早く短尺ウッドを開発するなど、一部のゴルファーには独自路線を歩む革新的なメーカーとして認知されていた。 また、今春にはドライバーの「ビガロス350」を発売。アイアンまでのフルラインナップを完成させたばかりだけに、今後はさらにシリーズの拡充に当たるものと思われていた。ところが、そこへ撤退の報道である。 「実は、5月末に撤退することを、販売店さんはじめ取引先に事前にご説明にうかがっている最中なんです。それがひと区切りついたところで、メディアにリリースで発表するつもりでいたんですが……。撤退の理由は、全社的に不採算事業を見直す中で、現在の市場の状況では今後も当分黒字化は難しい、先が見えないという結論に達したからです」(スポーツ用品部) しかし、ユーティリティ市場でのビガロスのネームバリューを考えると、まだまだ行けそうに思えるが……。 だが、クラブ用品の某専門家は、「それでもユーティリティだけでは、もともとマーケットは小さいし、買い替え需要のあるものでもないので、ジリ貧は仕方ないでしょう」と、同社が置かれている状況を推測。そのうえで、「この手の、打ち易さだけでアピールした“お助けクラブ”の限界ですね。2~3本も購入すれば十分で、新モデルでの差別化は難しい。現に、今はフェアウェイウッドタイプのほうが売れています。そのほうが、単に打ち易さだけでなく新しい可能性が期待できますからね」と、ニッチ的(すき間)クラブの限界を語る。 それでも、クラブ業界では大きな会社である。ここまで築いたブランド力に、ちょっと力を増強していけば、フルラインナップのクラブで、黒字化は可能では? 「そのためには、まず営業のマンパワーが必要でしょう。ところが、同社のような大きな会社の中の一事業部では、社内調整の壁で、それが簡単にはできないのでしょう。しかし、ここまでのリョービが築いてきた実績を思うと、撤退は純粋に残念です」と、業界に詳しい片山哲郎氏は語る。一事業部、しかも不採算部門という社内的ポジションが低い事業部の限界ということか。 「この業界は、新しいクラブを開発するだけなら一事業部でも可能でしょうが、売る態勢を考えると、専業メーカーでなければ今後は難しくなるでしょう」(片山氏) 実際、これまでもゴールドウィンやアシックスといったスポーツ用品メーカーが事業部として、斬新なクラブで参入するも、ほどなく撤退している。Sヤードでのセイコーの成功に刺激されて参入したが、現在は事実上休眠している大きなメーカーの事業部もある。 そのセイコーは、平成12年、反対に事業部から独立、現在はセイコーエスヤード(株)として組織的に専業メーカーとして販路を広げている。 ところで、リョービのクラブだが、撤退のニュースが伝えられるや、ゴルファーの間からは同社製品を購入する素早い反応が起こっているとか。 なお、同社では撤退後もアフターサービス部門の業務は続けているので安心して、とのことである。