週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
「今回の改造で(飛ばない)選手にチャンスがなくなったことは疑いの余地がない」とマスターズの会場で語っていたのは今年のマスターズ出場を辞退したJ・二クラス。 これに対し、オーガスタのフーティ・ジョンソン会長は「二クラスの発言には同意しかねる。P・エージンガーやR・メディエイトといった、それほど飛ばない選手たちが、今回の改造を歓迎している。つまり、昨年までは飛ばし屋たちがウェッジで第2打を打っていたが、飛ばない選手たちは8番アイアン。ところが今年は、飛ばし屋が8番なら飛ばない選手は6番。つまり、ウェッジと8番の差に比べれば、6番と8番の差は大してなく、飛ばない選手にもチャンスがある」と語り、改造によって、恩恵を受けるのは、むしろ飛ばない選手だと言うのだ。 それだけに、今年どういう選手が上位に来るのか注目されていた。そして、もしジョンソン会長の主張が正しければ、マスターズ以外の大会を開催するコースも、続々とオーガスタを真似してコース改造に走るのではないか、といった憶測まで流れていたのだ。 例えば、今年のマスターズでもっとも難しいホールとなった18番では、左側のバンカーまでの距離をちょうどティグラウンドから約300ヤード地点に移し、ライの比較的フラットな落とし場所としては、そのバンカー手前の260~280ヤード地点に持ってきていたのだ。 つまり、飛ばし屋は「(平らなライで打つために)2番アイアンでティショットすることが多かった」とJ・デーリーが語るように、ドライバーを振りまわすことなく、飛ばない選手と同じ場所から、第2打を打つことになった。 それでは一体、そうした戦術的なコース改造がどんな結果をもたらしたのか? 雨でグリーンがソフトだったにもかかわらず、平均ストローク数は昨年の72.486から今年の73.436へ。全体的に難しくなっていることには間違いないし、「雨のためにランが出ず、実際の距離は長かった」と谷口も語っていたが、上位にはさほど距離の出ない選手も名を連ねていた。たとえば2位に入ったR・グーセンは4日間の平均飛距離が275.6ヤードで45名中22位、4位に入ったJ・M・オラザバルは、274ヤードで同28位。平均265.5ヤード(42位)のC・ディマルコは、終わってみれば12位タイ。 コース改造直後にN・プライスが語っていた「平均で280ヤード以上飛ばせなくては勝つチャンスはない」という主張は必ずしも当たったとは言えなかったことになる。そうした意味では、ことタイガーの優勝以外に関してはオーガスタ側の思惑通りということになったのだろうが、平均飛距離で260ヤード未満のシニア選手には、今回の改造は大きなダメージを与えた。 「自分ができると思っていたプレーができないため、マスターズに出るのはこれが最後になる」と表明したA・パーマーなども、今回の改造の犠牲者といえなくもない。 ちなみに、マスターズの歴代優勝者には生涯の出場資格が与えられているが、大会委員会は今年から、一定以上のスコアを出せなくなった選手に対し出場辞退を要請する手紙を送り、事実B・キャスパーやG・ブリュ-ワなどが締め出されていた。 「オーガスタから(出場辞退要請の)手紙をもらいたくない」というのも、2日間30オーバーで予選落ちしたパーマーのマスターズ引退の理由になっているようだが、C・クーディが22オーバー、G・プレイヤーが14オーバー、T・アーロンが13オーバーなど距離の出ない往年の名選手は来年からの除外リストに載り始めている。 さて、歴代優勝者の話はともかく、今後他の試合でもコースの距離延長が行われるようになるのか、注目されるところだ。