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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 5/7・14号
2002年更新
会員権買っても入会せずに預託金返還訴訟
起こす“ビジネス”に業界の警戒心強まる
 名義書換をしないのに、預託金返還請求権だけを行使できるのか------。多くのゴルフ場経営会社が固唾を飲んで注目していたこの問題について、今年1月に最高裁が下した「YES」の判決を受け、業界内部では償還ビジネスの横行を警戒する動きが高まっている。

 問題の裁判は、埼玉ゴルフクラブを経営する(株)埼玉カントリー倶楽部を相手取り、同コースの個人正会員から、数社を経て会員権を譲り受けた会員権業者、(株)エス・ワイ・シー(以下SYC)が、預託金の返還を求めていた裁判だ。

 退会届けが添付された会員権を購入したSYCが、会員に代わって退会届けを出し、その上で入会手続きをとらずに預託金の返還を求めたもの。この裁判、1審の東京地裁判決では原告のSYCが勝訴したが、2審の東京高裁では一転、埼玉CC側が勝訴、SYC側が最高裁に上告していた。

 この問題は「プレー権と預託金返還請求権は一体である」という誰もが疑わなかった常識を覆しかねない問題である上、結果次第ではここ数年増加傾向にある“償還ビジネス”に法的なお墨付きを与えたため、ゴルフ場業界における注目度は極めて高かった。

 一昨年春の高裁判決では、ちゃんと入会手続きを取っている会員なら、預託金返還請求権は依然としてあるため、「分離請求を認めなくても何ら問題はないとしただけでも判決としては十分だったのに、その上にSYCの請求が“返還ビジネス”であり、それが弁護士法違反行為だから無効だと判断している点が高く評価できる」(ゴルフ場問題に詳しい熊谷信太郎弁護士)ものだったため、「ホッと胸をなでおろしたゴルフ場経営会社は少なくなかった」(業界関係者)。

 というのも、「SYCは東京地裁管轄だけでも5つのゴルフ場に対して同様の訴訟を提起していた上、会員権が住地ゴルフなど複数の業者の手を経てSYCの手に渡るまでの間で譲渡金額が不自然であったり、何よりSYCの代表はSYCの代理人弁護士の子息。その弁護士は当時は住地ゴルフの顧問でもあり、訴訟ビジネスのためのスキームであることは明白。そこへ裁判所がNOを突きつけた意味は大きかった」(同業界関係者)ためだ。

 ところが、今年1月の最高裁判決ではSYC側の主張が認められてしまった。判決を受け、関東ゴルフ会員権取引業協同組合(以下KGK)では、組合通信で「預託金返還ビジネスに関与することがないよう厳重注意する」よう、呼びかけるなど警戒を強めている。

「ゴルフ会員権業者はゴルフ場あってこその商売。ゴルフ場経営会社の基盤を揺るがすことで、結果的にプレーを楽しみたい会員が安心してプレーができる環境を奪うことになりかねない訴訟ビジネスに荷担することは、会員権業者としてあってはならないこと」(都内の会員権業者)だからだ。

 そもそも返すと約束した預託金を返さないほうが悪いというのは確かではあるが、日東興行などの問題を見てきた結果、会員側の意識も変化し、プレーを楽しみたい会員のプレー権確保に軸足は完全に移っている。プレー目的でない会員から会員権を買い集めて成立する訴訟ビジネスは、ゴルフ場経営会社の経営を揺さぶることになる。

 基本的に親会社の経営状態がよいなど、優良コースの会員権が標的になっているだけに、プレー目的の会員にとっては重大な不利益になっており、今回の最高裁判決が訴訟ビジネスを跋扈させる原因になるのは間違いない。

 ただ、熊谷弁護士は今回の最高裁判決について、業界内部の悲観的な見方に一部誤解があることも指摘する。

「今回で重要なのは、業として会員から買い集めて返還を求める弁護士法違反の部分については高裁に差し戻している点です。これは返還請求訴訟を本当に商売にしていいのかということをもう一度しっかり審理しろということです」

 債権者同士の利害は対立するというのも日東興行の問題を経て経験した教訓だ。だがプレー目的の会員の権利が、訴訟をビジネスとする業者に侵害されることはあってはならないはず。その意味でも今後の高裁審理は注目に値するはずだ。

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