週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
MCTは、以前にも報じたが、もともとはF・カプルスのアイデアで、これにTV局のフォックスネットワークが後ろ盾となって計画が進んでいる。お金の出所も決まっているし、メジャーを開催している名門コースとも、すでに会場使用の交渉に入っているとか。あとは、出場選手さえ集まれば、計画通りにスタートできるはずなのだが、肝心の選手たちの腰が重いのだ。 条件を満たす選手は約40名ほどいるが、MCTによれば、ツアーをスタートさせるには、最低20名の選手が必要とか。参加要請の手紙に対しての正式な発表は行われていないが、米ゴルフワールド誌が今年のマスターズに出場した22名の選手に問い合わせたところ、はっきり参加を表明したのは、カプルスとS・バレステロスのわずか2人だけ。G・ノーマン、N・プライス、S・ライル、M・オメーラ、N・ファルド、J・ペイト、P・エージンガ-、B・ランガーの8名はまだ決めていないと答えているものの、H・サットンをはじめ、T・カイト、F・ゼラー、C・ストレンジといった参加の可能性の高い思われていた12名の選手が、不参加を表明しているのだ。 「MCTは、PGAツアーを傷つけるものだし、これができれば、シニアツアーは大きな打撃を受ける。頭のいい人間なら誰も参加しない」と言い切るのはサットンだが、ある意味では、時期も悪かったといえるのかもしれない。 なにしろ、米ツアーの屋台骨がぐらつき始めているともいわれているときだけに、ここでPGAツアーに背を向けることは、道義上もまずいといった意識が選手たちにあるからだ。 実際、来年の米ツアーで、まだはっきりと冠スポンサーが決まっていない試合が、なんと15試合もあるという。米ツアーは今年57試合が予定されているが、メジャーや世界ゴルフ選手権(WGC)、オフシーズンの後援競技などを除けば、通常の試合は42試合しかない。この内の3分の1強にもあたる来年の試合のスポンサーが、決まっていないというのだから、かなり厳しい状況といえるだろう。 PGAツアーにいわせると「来年、全試合にスポンサーがつくことにはまったく疑いの余地がない。ただ、同時多発テロと不況の影響で、決まるのが遅くなっているだけ」(H・ヒュース、PGAツアー副会長)ということになるが、同時多発テロ以降、会場の警備費用が一気に3倍以上に跳ね上がっているほか、アメリカの経済界の方も今ひとつ元気がない。 あるスポンサーにいわせると「1~2年前までは、『嫌ならスポンサーを降りてもいい。ツアーのスポンサーになりたがっているウェイティングリストがある』と豪語して、ツアーは賞金アップを強要していたのに……」ということになるのだが、蓋をあけてみれば、伝統あるウエスタンオープンやPGAツアーが主催者であるプレーヤーズ選手権の後援スポンサーもまだ見つからない状況なのだ。 レギュラーツアーでもこんな調子なのだから、視聴率が低迷するシニアツアーではなおさら。そんな苦しい状況で、メジャー優勝経験者のビッグネームをMCTに持っていかれたら、シニアツアーの存続の危機にもなりかねない。それだけに、米ツアーの顔として活躍してきたメジャーの優勝経験者には、簡単にはツアーを裏切れないというわけなのだ。まだ、土壇場の逆転劇の可能性もないではないが、MCTにすれば、出場資格規定を修正し、たとえば全米アマをメジャー扱いとするなどして、参加資格を緩和しないことには、20名のメンバーを集め、来年試合を開始するのは難しいかもしれない。