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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。 内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。 |
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週刊ゴルフダイジェスト 6/4号 |
2002年更新 |
反発係数問題でUSGAとR&Aが合意
高反発ドライバーはルール違反になる!?
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5月9日、USGA(米国ゴルフ協会)とR&A(ロイヤル・アンド・エンシェント)が、ドライバーの反発係数規制において合意に達したことを発表したが、その内容は国内のメーカーをはじめ、多方面にさまざまな影響を与えるものだった。
98年11月、USGAは、飛びすぎ防止のため、薄くてたわむ、いわゆるスプリング効果のあるフェースのドライバーを独自のテストにより規制し始めた。反発係数(COR値=高いほうが反発力が強い)の上限を0.830と定め、それを超えるドライバーはルール違反としたのだ。
一方、日本なども統括する英国のR&Aは「そこまでする必要はない」とし、数値による規制は見送ってきていた。そのため国によってルールが異なるダブルスタンダード状態が続き、混乱を招いていた。それが「今やゴルフはインターナショナルなゲーム。やはりルールの統一は必要だ」(R&Aのセクレタリー、P・ドーソン)として、ある意味、R&Aが折れる形で、反発係数による規制を導入することで合意を見たのだ。
今回の合意に基づく提案は、一般アマレベルの競技では、USGAが採用してきた0.830ではなく、期限付きで0.860としたのは「これまでのテストで0.860を超えるドライバーはなかった」(USGA)こともあるだろうが、反発係数の規制に反対し続けてきたR&Aの顔を立てたという見方もある。
たしかに、現在はメジャー競技などの出場資格が世界ランクで決められる関係上、各国のツアーによってルールが異なるのは都合が悪いとし、米PGAツアーは、ルール統一への圧力をかけていたようで、今回の合意を歓迎、反発係数のテスト方法の簡略化についてもサポートする方針を明らかにしている。
展開次第で法的対応を検討するメーカーも
さて、今回の発表で、一番泡を喰ったのが、R&A傘下で、反発係数に縛られず新製品を開発し続けてきた日本のメーカーだろう。昨年辺りから、国内ではルールに適合するがUSGAの規制値は超える高反発フェースをウリにしたドライバーが急増。国内市場は今や高反発系一色といった感じすらあるからだ。
主要メーカーのアンケートを見る限り、来年早々ルール違反となる0.860を超えるドライバーを今後開発していくかどうかについてはさすがに消極的だが、問題は5年後に一般アマレベルの競技でもルール違反となる、今主流の0.830~0.860の高反発系ドライバーを、メーカーがいつまで開発、販売し続けるのかという点。それについては「急なことで、まだ正式決定ではないので検討中」というところがほとんどだが、ルール違反になるということで売り上げが落ちるのか、あるいは、競技に無関心な一般ゴルファーにとっては、いずれ製造中止になる高反発系ドライバーは、COR値が高ければ高いほど稀少価値となるわけで、逆に売り上げが伸びるのか、ユーザーの動向も興味深いところだ。
さらに一部メーカーが自社測定値として公表する、ダイワの「オノフ」、アクシネットの「キングコブラSS370」、ブリヂストンの「ツアーステージRV-10」「アクセスHD-700」、ウイルソンの「ディープレッド」シリーズなど、0.860を超えるドライバーは、(計測方法が変わるため一概には言えないが)来年早々にルール違反となってしまうわけで、各社が戸惑うのも無理はない。
カタログにも公表しているCOR値0.870の「オノフ」を販売するダイワ精工では、「すでにR&Aの審査(まだ反発係数規制はないが)を通り、販売しているクラブが突然ルール違反になってしまってはユーザーが不利益を被ることになってしまいます。『オノフ』はもともとアメリカで販売する予定がなかったのでUSGAのテストには申請していなかったのですが、こういう事態になったのでUSGAが設ける期限の7月15日までに提出する予定です。ユーザーへの販売責任も含め、その後の展開次第では販売への影響も考えられ、法的対応も含めて検討します」(マーケティング担当課長、武茂樹氏)と話すが、USGAは今回の合意発表にあたり、先述通り、0.860を超えるドライバーの存在を前提にしていないので、かつてのピン問題のような訴訟による損害を避けるためにも、今後提出されるクラブのテストの結果次第では、0.860の規制値が引き上げられるか、現段階で0.860を超えるドライバーになんらかの特別措置が取られる可能性もないではない。
どの競技が0.83でどの競技が0.86か?
気になる点は、まだまだある。来年早々から0.830の規制対象となる“高度な技術を持つ選手を対象にした競技”とR&Aの声明に謳われている競技とは、一体どのレベルの競技までを指すのかという問題だ。JGAでは「まだこれから検討していく」と言うが、今回の提案の中に、その例として全英・全米の両オープンの名前だけが挙げられていることからすると、あくまでプロの競技に限定する可能性が強いと思われる。
日本のプロトーナメントを主管する日本ゴルフツアー機構(JGTO)に聞いてみると、「常識的に解釈すると、少なくともプロの試合はすべて対象になるとは思いますが、まだ検討段階。正式には、7月の全英オープンの会場で行われる6大ツアーのフェデレーションで他国ツアーと足並みを揃えることになるでしょう」(広報担当)。
つまり、今、国内で主流となっている高反発系ドライバーは、アマチュア競技はともかく、来年からはプロの試合では使えなくなる可能性が濃厚なのだ。
「たしかに、今回の規制で高反発系のドライバーは使えなくなると痛いですね。ただ、反発係数だけで飛距離がアップしたわけではないし、自分だけのことじゃないので悲観はしてません」というのは高反発系のドライバーに替えて飛距離が20~30ヤードはアップしたという久保谷健一だ。その他、高反発系のドライバーの恩恵に預かってツアーで活躍しているベテラン選手も多いだけに、ツアー界での影響も大きそうだ。
また、外資メーカーの立場からすると、反発係数による規制に一貫して反対の立場を取り続けてきたキャロウェイのR・ドラポー社長の「我々のようなアメリカのメーカーの立場から言えば、これまでのように米国仕様に加え、日本のメーカーに対抗するために日本仕様の高反発系のモデルとの2タイプを開発する必要がなくなるので開発コストが抑えられる」という発言に見られるように、今回の決定を歓迎している面もあるようだ。
他にも、これまで一般アマの競技も0.830の規制下にあった米国では、皮肉にも、来年から5年間は、ERCなどのような0.830~0.860間の高反発系ドライバーもルール適合クラブになってしまうため、日本メーカーの高反発系のドライバーの需要が高まるのか? USGAが今年の年頭に突如発表したヘッド・サイズやシャフトの長さ制限については今後どうなるのか? とくに一般アマレベルの競技でどうやって違反クラブをチェックしていくのか?------今回のUSGAとR&Aの突然の合意発表が投げかけた波紋はあまりに大きい。
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