週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
「茂樹ほど笑顔を見せる選手はこれまで見たことがない。彼を私たちのチャンピオンとして迎えることができて、こんなに嬉しいことはない」と語ったのは、大会ホストのB・ネルソンだが、とにかく今回の優勝で目立ったのが、丸山の愛嬌ある笑顔とおどけたジェスチャー。米国のテレビ中継の解説者(J・ナンツ氏)は、丸山のそんな笑顔を評して「新鮮な空気を吸っているようだ」とベタ褒めで、丸山がピンチにさしかかると「丸山から笑顔が消えている」などと、何かと“スマイル”という言葉を連発し、注目を集めたのだ。 丸山自身も、たとえば3日目のラウンド後の会見で「カラオケが上手いんだって?」と聞かれると、「ゴルフより歌のほうが上手い」と、集まった記者の前で自慢の喉を披露して歌を歌ったり、プレー中、テレビカメラに向かって、「パパだよ」と手を振って息子に呼びかけたりと、ひょうきんぶりを見せてファンサービス。他にも、舌を出したり、飛び上がったりと、さまざまなパフォーマンスでしっかりアメリカのゴルフファンに印象を植え付けたのだ。 こうした丸山の笑顔に対して、アメリカのインターネットのチャットルームを覗くと、「ゴルフをやっているのに不謹慎。あの態度は見ていられない」などというコメントが載ったかと思ったら、「態度の悪いプレーヤーが多い中で、丸山の笑顔はすがすがしい」とか、「あの笑顔は日本人の習慣みたいなもの、気にするほどのことではない」、「そんなことより、世界のトップの選手たちを抑えて優勝した丸山のゴルフをほめるべき」といった反論が、その日のうちに続出するなど、ファンの間でもホットな話題になっていたのだ。 少し前に、コミッショナーのT・フィンチェム氏が、プレー中、ミスしてクラブを投げたり、怒りを露わにするのは、ツアーのイメージが損なわれるので自粛するよう選手に呼びかけていたことも、丸山の笑顔を引き立たせたのかもしれない。 「ファンには理解できないかもしれないが、試合では大金がかかっているんだ。そんな上品なことやってられない」と、先のコミッショナーの提言を一蹴したのはF・リックライターだが、選手全般にそんな風潮がでてきていただけに、終始笑顔でプレーした丸山が新鮮に映り、論議を呼ぶまでになったのだろう。 丸山本人は、「よく笑ってるけど、心の中でも笑っているというわけじゃない。僕はもっと高い目標を心に中に秘めているんだ」と、すでに心は次の目標に向かっている。そんな冷静さが“スマイリング・アサシン(笑顔の暗殺者)”という丸山のあだ名を定着させているのかもしれない。 この優勝で今年の全米オープンの出場権を獲得した丸山。今度はメジャーで、あのスマイルを全米のゴルフファンに振りまいてもらいたいものだ。