週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
その新しい魅力というのは、キャディの指名制である。キャディを指名すること自体は、これまでも歴史のあるコースなどで、馴染みの会員がキャディマスターに頼んで、気心の知れたキャディを回してもらうといった、いわば慣例の形では行われてきた。だた、誰でも利用できる制度として、しかも有料で実施するところはなかった。 その有料のキャディ指名制を採用するゴルフ場のひとつ、那須黒羽GC(栃木県)は昨年12月から実施している。料金はキャディ1人1000円。4人で分担すれば250円で希望のキャディが付いてくれる。「キャディ同士で競わせることでキャディ全体の質の向上につなげたいと始めたことですが、メンバーさんの間からは以前から要望のあったことなんです」(キャディマスター室) また、キャディにはその1000円が報奨金となるので、有能なキャディの確保につながればという狙いもあったそうだ。 「セルフ化の時代に逆行しているようですが、有能なキャディをそろえることは、周囲がセルフコースの中、大きな差別化になるはず」と同担当者は語る。同GCの場合、なんとキャディマスター室の脇に、各キャディのセールス・コメントが顔写真付きで掲示されている。水商売系のシステムを連想する人も少なくないのでは……。 さて、実際の反応だが、会員の意見で始めたものの意外にも会員の利用はごく稀れ。なぜなら、顔見知りのキャディが何人もいる中で、ひとりだけ贔屓のキャディを作ることができないからだ。実際に利用するのはビジターのリピーターが中心で、現在、月10数件ほどにとどまっている。それでも徐々に利用者は増えつつある。指名すれば、2度目のビジタープレーでも、顔馴染みのキャディから親しく名前を呼ばれるのだから、居心地が悪いわけはない。 同様に、今年3月から有料(キャディ1人当たり500円)の指名制度を採用している月ケ瀬CC(京都府)も、5月は10数件どまり。が、こちらも月を追って利用者は増えている。「一番の目的はキャディの質の向上ですから、利用者数に関係なく、長い目で見てキャディにいい効果をもたらすようでしたら継続していきます」(競技課・井戸本一郎氏) といっても、各キャディが「よろしくお願いいたします」と書かれた名刺をプレーヤーに配り、リピートを呼びかけているのだから営業面での効果も期待できそうだ。 有料ではないが、キャディも営業を担当するため3年前から成り行きで指名制度を実施しているのは広島県の戸山CCだ。 「うちはキャディにも営業をさせているんです。それでお客さんと親しく話すようになれば、お客さんからは自然と『じゃ今度行くから、君がキャディやってくれ』となるケースが出てきたので、指名できるようにしたんです」(井上和満支配人) 今や同CCでは全体の10パーセント程度がキャディを指名しているという。中には、接待で外国人ゴルファーを招待する際、事前に英語の話せるキャディを指名するという利用者もいるそうだ。ただし、ここでも会員の利用は少ない。やはり、あからさまに贔屓のキャディを作ることは、はばかられるのか……。何につけ、女性(キャディ)を敵に回すことは、極力避けたほうがよいのだろう。