週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
申立代理人の松田耕治弁護士は、「現在プレー権の維持を約束してくれるスポンサーを募っている。すでに名乗りを挙げているところもある」とし、再生計画案提出まで3カ月という再生法の原則もあるので、3カ月以内には方向性が決まる。 桂ヶ丘開発はもともとは平成9年8月に会社更生手続の開始を申立てて倒産した上場ゼネコン・大都工業の子会社だった。大都工業の倒産は同CCの預託金返還請求の急増が原因で、桂ヶ丘開発も同時に200億円の負債を抱えて和議手続の開始を申立て、平成11年3月には和議認可にこぎ着けたばかり。 債権者が受け入れた和議条件は、(1)退会者は預託金の95パーセントカットで残り5パーセントを和議確定3年後から4年分割か、90パーセントで残り10パーセントを和議確定15年後一括のどちらかを選択、(2)プレー継続希望者は預託金の90パーセントカットで残り10パーセントは15年据え置き、といったもので、結果200億円の負債は約35億円まで減った。 和議認可までスンナリ行ったのは、200億円の負債のうち、預託金債務が70億円と3割強で会員数も540名程度と少なかったこと、しかも大半は大都工業の関係者が多かったことなどから、再建協力を取り付けやすかったようだ。しかしその後、大都工業が再建のために本業集中を余儀なくされ、桂ヶ丘開発の株式は売却され、不動産鑑定会社系列の企業を経て昨年10月、ローンスターの手に渡った。 ただ、同CCの施設にはもともと野村ファイナンスが1番抵当権を設定していたが、平成12年にローンスター・グループが同社を買収したため、株式を取得したのは昨年10月だが、債権を取得してからはすでに2年近く経過していることになる。 ところで、3年前に認可を受けた和議に基づく返済が今年から始まるのに、それが困難になったため民事再生申立てとなったのだが、2度の倒産とはいったいどうことなのだろう? 「会社更生でも、昔から計画通り返済できないときには計画変更の提案という手段があった。民事再生ができて、その選択肢が広がった。和議の場合でも当然できる。いやなら債権者がノーを突きつけるだけ」(倒産法に詳しい都銀回収担当) 当初、合意していた和議案はなかったことになり、改めて債権カット案が呈示されるが、和議案が履行できないくらいだから、和議のときより厳しい条件になるのは間違いない。 桂ヶ丘開発の売上げは「毎年2割ずつダウン、平成14年3月期には2億8000万円」(前出・松田弁護士)にまで落ち込んでいるという。前経営者の時代にコースがかなり荒れたことも大きく影響しているようだ。 ローンスターが桂ヶ丘開発向けの債権と同社株式をいくらで買い取ったのかは「ノーコメント」(松田弁護士)だが、買収したコースの再生を断念して民事再生という手続きを経ての売却に動いたことは間違いない。 本誌が昨年、ローンスター・グループへインタビューした際も、同グループ幹部は「欧米各国でのゴルフ場経営の合理的ノウハウを導入することで、経営改善の余地があるコースを再建させていく方針で、短期転売は考えていない」としていた。だが、経営改善の余地があると思って買ったコースが、100パーセント経営改善に成功するわけもない。やってみたが、経営改善の余地はないと判断すれば売らざるを得ない、ということだろう。 すでにローンスターが“ギブアップ”したコースはいくつかあるとも言われ、今回と同様のケースが出てくる可能性は高いだろう。ちなみに、同グループがスポンサー候補に挙がっている阿見GC、清川CCなどでは、「会員の存在を尊重せず、ゴルフ場買収を一過性のビジネスとしてしかとらえていないのでは」との不安が大きいとして、会員組織が反対する動きが見られていた。今回、ローンスターが桂ヶ丘CCを買収後、早々に売却の意図を示したことで、図らずもこういった不安を裏付ける格好となった。