週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
このところ最終日は上位陣のスコアの崩れがともなう優勝争いになっていた国内女子ツアー。そんな中、高橋が2打差3位で迎えた最終日に68をマーク、スコアを伸ばしていたトップに追いつき追い越して初Vを達成した。とくにインに入って13番から15番の3連続バーディ奪取は圧巻。テレビ観戦で「こんな選手がいたんだ」と目を見張ったファンも少なくないはずだ。 身長158センチ、体重56キロの身体は現在の女子スポーツ選手としてはかなりの小柄。しかし、その豪快なスウィングと攻撃的なゴルフは高橋をひと回り大型な選手と錯覚させるほど。 「昨年の後半戦から彼女には注目していた」「優勝するのは時間の問題と思っていた」等々、先輩選手や関係者、報道陣にも「高橋には密かに目をつけていた」人間は多い。ポンと初優勝して、その後なりを潜めてしまう若手も多い中、この高橋の初V達成には周囲の多くが納得、今後さらなる期待を抱いている。 一昨年来、国内女子ツアーをリードする若き女王・不動が99年終盤の伊藤園レディスで初優勝して以来、実に2年半ぶりに出現した“不動より若い”優勝者でもあるからだ。 高橋は1977年11月4日生まれの24歳。小学時代は福島市大会で陸上100メートル走1位、水泳自由形3位のスポーツ万能少女で、小学3年生のときから本格的にゴルフに取り組んだという。不動と同様「始めたときからグローブなし」の素手でプレー、高校時代に東北ジュニア優勝、日本ジュニア3位などの成績を残し、一昨年8月のプロテストに3度目の挑戦で合格。昨年7月のゴルフ5レディスでツアーデビュー、いきなり9位タイの成績を残し、以降後半戦だけの出場で賞金ランク37位となりシード権を獲得している。 優勝記者会見では、初Vの勝因を「(最終日の)バック9で耐えることと攻めることができたからだと思います」と語った高橋。続けて「バック9、ずっとアッコさんと一緒に回ってたんです。この場面、アッコさんだったら……って考えながら」とつけ加えた。高橋が「アッコさん」と呼ぶのは他でもない福嶋晃子のことだが、その福嶋とはジュニア時代に福嶋の末妹・紘子さん(現在研修生)と知り合ったのが縁で、研修生時代とプロ合格後を通じ5度帯同キャディを務めたほどの間柄。5回中2度は優勝を目の当たりにし「飛距離だけでなく、アプローチもすごく繊細。自分もああいうゴルフがしたい。あんなふうにギャラリーを惹きつけるプロになりたい」と、目標にしているという。 当然のごとく「4、5年後、30歳になる前に米ツアーに挑戦したいです」という高橋。優勝会見直後には「一番報告したい人」と、さっそく福嶋に国際電話をかけて喜びを噛みしめていたが、ツアー出場26試合目でのVは福嶋の同23試合目にひけをとらない立派なもの。不動の76試合目達成と比較すればほぼ3倍のスピード勝利だ。 「今年は優勝のことは頭になかったんです。昨年は恐いもの知らずの状態で闘って、気づいたらシードを獲れていた。だから今年は自分できちんとシード権を目標として意識して確保しようと、それだけ考えていたんです」というのは偽らざるところらしいが、今季はまだまだツアーをかき回しそうだ。 これで出場権獲得がほぼ確定的となった8月第2週の全英女子オープンでも、どんなプレーを見せてくれるか楽しみだ。