週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
ベスト8が史上初の全員10代。36ホールのストロークプレーの上位32人が残るマッチプレーに進んだ中でも、最年少12歳の金田久美子を始めとして中学生が5人、高校生が14人。ジュニアの大会さながらの顔ぶれに、関係者は目を見張った。 「マッチプレー形式になってから本当にジュニアの子ばかりが残っている実感があります」とJGA事務局がしみじみ語る。日本女子アマはその昔はマッチプレーだったが、ストロークプレーで行われるようになって久しい。だが、2000年、日本アマとともに「ゴルフの原点に戻る」という趣旨から、36ホールのストロークプレーで予選を行い、上位に32人がマッチプレーで戦うという試合形式に変更。決勝まで進んだ場合、予選から合わせて5日間で約8ラウンド(マッチプレーは勝負次第で長くも短くもなるが)の長丁場になったこともあって、低年齢化が著しく進み、今年はそれがピークに達したようだ。 日本ゴルフ協会(JGA)広報委員会参与で、ゴルフジャーナリストの土井新吉氏は、この急激な低年齢化現象について体力、気力、集中力の問題を第一に挙げた。 「以前のようなストロークプレーなら、18ホールづつの4日間で済んだが、今の形式だと年配の選手は、マッチプレーになると体力ももたない。それ以前に、上位32人に残ることも難しくなっているのは、競技としてのゴルフに費やす時間の差でしょう。社会人でも日本女子アマに出るような人ならラウンド回数自体は多いはずだが、試合となると圧倒的に学生のほうが多い。ゴルフはメンタル面に負うところが大きく、経験がモノを言うが、ジュニアの年代のほうが試合にたくさん出ることによってその経験も積んでいる。こうなるともう若い人が強いのは当然の帰結」だと解説する。 もちろん、ゴルフの底辺拡大で、幼い頃からプロを目指してゴルフを始めるジュニアは増加、レベルも確実に上がっている。「レベルアップは感じますね。スウィングもきれいな人が多い。子供の頃は遊び感覚でやっていた昔とは違い、今は目指すところがハッキリしている。指導者も増え(ジュニアを取り巻く)環境が良くなっている。メディアによっていろんなことが広められ、タイガー・ウッズやカリー・ウェブなどを目標にする子がたくさんいます」と現状を分析するのは、JGA女子委員会委員長の溝口まち子氏だ。 以前は優勝者を多く輩出していた大学生も今回、ベスト8に入ったのはひとりだけ。これについては強いジュニアが大学へ進学せずプロ入りするケースが増えているため、大学ゴルフ界レベルが下がっているという事情もある。 ある大会の出場者は「プロテストを受けるために毎月の研修会に出場しなくていけなくて大変だった。そのため全日本学生などの優勝でその免除とプロテスト一発受験を目指した人も多かったが、今年から実施されるQTでその必要がなくなった」と、プロ入りのための大学進学が減ったことを指摘する。 実際、今大会優勝の上原は今年3月に高校を卒業、8月のQTを目指しつつ、現在はアマとしてプレーを続けている。準優勝の諸見里しのぶも、まだ15歳ながら「大学へは行きません。満18歳以上という年齢制限がなければすぐにでもプロになりたい」という考えで、今回上位に入ったほとんどの選手は大学進学よりも完全なプロ志向だ。 低年齢化=プロ予備軍の戦いという様相を呈してきた日本女子アマ。 「日本女子アマは強い者が勝つ。レベルも上がっているし、やっぱりいいことでしょう。こういう時代が続くのでは」と溝口氏はこの傾向をプラスに受け止めている。19歳の成田いづみが「私がベスト8最年長? 寂しい」と嘆き、準決勝で姿を消した17歳の宮里藍が「私はもう若くありません」と言った驚くべき現状は、当分の間続きそうだ。