週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
7月8日に大栄CCを経営する(株)大栄カントリークラブ、翌9日には石坂GCの鳩山スポーツランド(株)、そして10日には太子CCの太子ゴルフ観光(株)と、多度CC名古屋・中軽井沢CC両コースの経営会社である多度軽井沢開発(株)の合計4社が民事再生手続開始の申立を行っている。 大日本土木は7月5日付で東京地裁に民事再生手続の開始を申立てたが、系列ゴルフ場の経営会社には「事前に連絡がなかったため、まさに寝耳に水。資産が散逸しないように、急遽民事再生申立に動いた」(4社の申立代理人である服部弘志弁護士)のだという。 ゴルフ場経営会社の民事再生申立はもはや珍しくないが、今回は大分事情が異なる。通常、親会社、それも東証一部上場の会社が民事再生申立に動くときは、グループ各社についても同時に申し立てるべきかどうか検討し、グループ一体で準備するもの。しかし、今回は系列ゴルフ場経営会社には何の相談もなかったようだ。 このため「普通なら再生計画案の大枠くらいは申立書に書くが、今回は何も書かずに申し立てた。今後のことは現時点では一切白紙」(服部弁護士) 系列ゴルフ場は経営会社が別で、大栄CC以外は預託金の償還期限が到来していない、鳩山スポーツランドや多度軽井沢開発は負債のほぼ全額が預託金債務で大日本土木との債権債務関係はほとんどないが、太子ゴルフ観光はは大日本との間に債権債務関係がある、などなど各コースの状況はまちまち。大日本土木との間で債権債務関係があれば、調整も必要になるので、スポンサー探しも含め、今後は各コースごとに個別に条件を詰めていくことになるのは間違いない。 大日本土木がグループ会社の処理にイニシアティブを発揮する気配は今のところなく、少なくとも、日東興業やスポーツ振興のような全コース一体処理ということはまずなさそうだ。系列コースの経営会社には、民事再生申立に踏み切った4社以外に、パブリックの猿島CCの経営会社である(株)猿島カントリー、建設途中の神戸CCの栄開発(株)があるが、こちらは取材拒否のため今後の見通しは不明だ。 ちなみに、かつて系列コースだった岐阜CC谷汲の経営会社・谷汲開発(株)は、2年前に系列から外れ、今は大日本土木のグループ会社が株式の一部を保有しているだけで、大日本土木との債権債務関係はなくなっており、「(大日本土木の倒産の)影響はとくに出ていない」(同GC)という。 大日本土木の鬼頭徳就社長は、倒産を発表した会見の席上、系列ゴルフ場の預託金問題や、大株主である近鉄グループの支援打ち切りなどを破綻原因に上げたが「預託金返還で出ていったカネはいくらでもない。要は銀行に支援を打ち切られたせい」(経済専門誌ゼネコン担当記者)だというのだが、「ゼネコンはどこも工事欲しさにゴルフ場開発に積極的にカネをつぎ込んだが、大日本土木はその中でもとりわけ自前のコース建設に熱心だった。2年くらい前、ゴルフ場からの撤退を内々に決めていながら社外にはあまり公にしていなかった。最後くらいはもう少し責任を持ってもいいのでは」(同)。 今回の大日本土木の対応は、子会社のゴルフ場の会員権を全て買い取った住友ゴムとはあまりにも対照的。大日本土木の看板を信用して会員権を購入した会員も少なくないはず。“グループ会社のことはまるで知らん顔”では、会員も浮かばれない。