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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 8/6号
2002年更新
外資GS傘下で和議再建中の日東興業が
「債務超過解消狙い」民事再生法を申請
 和議再建中で昨年12月にゴールドマンサックス(以下GS)が買収した日東興業(及び系列11社)が、7月15日、東京地裁に民事再生法を申請した。業界を激震させた和議申請から4年半。会員の権利を侵害する再倒産との批判のある一方、「現実的な再建スキーム」との評価もある。さて今回、民事再生に踏み切った真意は何なのか?

 日東興業の和議再建には、大きく2つの課題があった。ひとつは別除権と呼ばれる金融債務の存在であり、もうひとつが7万1985名の会員から集めた2641億円の預託金債務。前者については昨年12月、日東興業の全株式を取得したGSにより、すでに7割が買収されている。預託金債務については、和議案で退会者は82パーセントのカット。プレー権を望む会員は2013年から年間10億円を上限に、抽選方式で返済するということになっていた。

 今回、民事再生に踏み切った理由を日東興業では、次のように説明する。

「金融債務については、GSがすでに70パーセント近くの債権を買い取っているが、残り約30パーセントについては交渉のテーブルにもついてもらえない状況。和議では、金融機関との間で、担保権を行使しない協定書を結んでいるが、協定を守ってもらうのが困難との判断から、さらに債務を圧縮してもらえる民事再生を選んだ、との判断がひとつ。もうひとつが約2700億円の預託金債務で、その影響で連結決算は約1500億円の債務超過に陥っている。このバランスシートを改善しない限り、日東興業の再建はないとの判断です。さらにいえば(和議申し立てをしていない別法人経営の)浜野GCの会員から、現時点で30数件の預託金返還訴訟が起こされており、100人規模になりそうな様子。もし、これらの判決が出てしまうと再建にも影響を与えるため、民事再生手続きに踏み切ったのです」

 会員には唐突に映る民事再生法申請だが、GSが買収後の今年1月から30コースの理事、役員を中心に何度にもわたり説明会を開催。また、和議の履行を監督する監督委員会にも諮り、日東興業、GSから民事再生法の必要性が説かれてきた。監督委員会は7月5日に開催され、民事再生法申請を認めた模様だが、出席した監督委員のひとりは次のように話す。

「一般週刊誌などで会員の不安を煽るような記事が書かれているが、今回の民事再生法申請はゴルフ場を維持し、会員のプレー権を守るという観点からの判断だ。実際、GSによる買収も債権を回収することで金融機関による抵当権の行使を阻止し、プレー権を守るとの判断からのもの。預託金にしても年間10億円を上限に返還したら270年かかる計算で、たしかに宝くじの抽選に当たるような可能性を会員から奪うことになってしまうが、債務超過を解消して会社そのものをいち早く再建させることが、会員全体の利益につながると判断した」

 気になる会員の権利については、会員に宛てた案内文の中で、(1)従来通り営業を続ける、(2)プレー権は保障する、(3)名変は当面停止するが、できるだけ早く再開する、(4)預託金については再生手続きの一環として、今後数カ月で取り扱いが決まり、現段階では回答できない、と答えており、昨今の民事再生会社の一般的な計画案に落ち着く公算が大きい。

 それから考えると、和議では、一応建前的には残留会員については全額保証となっていた預託金の扱いについても他コースの例から類推するに、おそらく9割以上のカットは免れ得ないと見られている。

今回民事再生となった浜野GC会員の動きに注目

 ただ、今回の民事再生で、もっとも今後紛糾しそうなのが、和議の対象会社ではないものの、本体の日東興業がゴルフ場施設に多額の抵当権を設定していた影響から、和議条件に縛られていた浜野GCだ。今回、経営会社の(株)国際友情倶楽部も民事再生法申請をしたことから、当然、黙っていられるものではない。

 というのも、同GCの会員有志は独自の再建を目指し、会社更生法を申請。東京地裁では棄却されたものの、現在、適用申請を巡って東京高裁で審理中だからだ。

 メンバーのひとりでもある満田繁和弁護士は、「和議から民事再生に切り換えるということは、そもそも和議では再建できない、つまり和議が失敗だったということ。これは会員に対する冒涜です。再生計画案が否決されれば、破産になって抵当権を行使しGSが自己競落することも考えられる。我々は独自に会社更生による再建を目指すが、状況が変わったことで、高裁も我々の主張を認めてくれるものと信じている」と話す。

 さて、どうしても外資系ということで転売などの噂がつきまとうが、この点についてGSは、「我々は投資を回収するのが仕事です。その方法として日東興業の場合、上場によるキャピタルゲインを得るのが目標と理解して頂いて結構です。そのためにも30コースを回り、ニーズを徹底的に検証、コースにも投資を行い、魅力あるコースへの転換の努力もしてきました。あとは会社の財務体質を改善することです。債務超過を解消し上場させることは、私たちだけでなく、会員権相場の上昇も含め、会員のメリットになるものと信じています」(GS広報部)

 上場時期については明言は避けながらも、中長期とし、5年後を目途に考えている模様だ。GSでは日東興業の他、会社更生中のスポーツ振興についても、スポンサーに内定している。日東グループと合わせると、実に国内60コースを展開する最大手に、一躍のし上ったわけだ。それだけに、「業界に与える影響が大きいことはわかっています。だが、それは日本のゴルフ界に元気を与える影響でありたいと考えています」(GS広報部)

 業界最大手であっただけに、97年暮れの和議申請は、社会問題として、大きな混乱を招き、以後のゴルフ場会社の経営破たんのモデルケースとなるなど大きな影響を与えたことも事実である。また、当時は民事再生法は存在せず、さらに、今ほどゴルフ場の「倒産(再生)」が一般的でなかったため、今にして思えば感情対立が目立った印象も拭えない。それだけに今回、民事再生に踏み切った判断の是非はともかく、日東グループには「日本のゴルフ場をどうするのか」、会員たちには「自分たちのクラブをどうするのか」といった、冷静な議論が求められている。

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