週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
米ゴルフマガジン誌8月号によれば、大半のメーカーが、この8月から来年早々にかけ、これまでは米国内でルール違反だった反発係数が0.83を超える高反発ドライバーを続々と販売し始めるというのだ。 たとえば、キングコブラ、マグレガー、テーラーメイド、タイトリスト、ウイルソンなど、これまで反発係数規制のなかった日本向けに高反発モデルをすでに販売しているブランド、及びダイワ、キャスコ、ブリヂストン(プリセプト)、ダンロップ(スリクソン)などの日本メーカーなどは、日本モデルのシャフトを米国向けに入れ替えたり、モデル名を変えるなどして、米国で発売を開始するという。その他、日本モデルを作っていなかったメーカーも、続々と高反発ドライバーを新開発し、販売する予定という。 中にはホッグ・ゴルフなどのように「反発係数が0.87を超え、新ルールにも適合しないドライバーを今年の終わりには発表するだろう」というメーカーも現れるなど、日本に遅れる形で高反発ドライバー・ブームが巻き起こりそうな様相を呈している。 米国では通常、主力ドライバーのモデルチェンジは数年サイクルで行われていたことを考えると、これほど多くのメーカーがこの時期に新製品を一挙に販売し始めるのは、米用品界では異例の出来事だ。 反発係数が0.83を超え、ルール違反を承知で米国内で販売を開始して話題となったキャロウェイのERCIIが、このルール統一提案が発表されて以来、一転、ルール適合になりそうだということで、先の全英オープンでも大々的にCM展開を始め、これが効を奏し、他社も負けじと動き始めたようだ。 また、この新ドライバー・ラッシュが巡りめぐって日本のゴルファーにも恩恵をもたらす可能性もありそうだ。もともとは日本などアジア限定で高反発モデルを販売していたメーカーも、たとえばナイキのように「(日本モデルの)フォージドXフェースは、耐久性の問題で、アメリカには持って来られない(アジアのゴルファーは、米国人ゴルファーに比べてスウィングスピードが遅いためフェースが痛みにくい)」としているが、一方で「一般にアメリカでは、日本のような高額設定はできない。つまり、日本で販売されているクラブと同じものをアメリカで安く売るわけにはいかないから、アメリカ国内では別の新モデルとしてで発売せざるえない」(米国の日系ゴルフショップオーナー)といった穿った見方もある。となれば、米国ではかなり安い値段で出回り始める可能性もあり、その米国価格が定着すれば、今度は逆に、日本の高反発ドライバーの価格も下がる可能性だってあるということだ。 さらに、各メーカーが高反発ドライバーの販売を急いでいる事情も見逃せない。そもそもUSGAとR&Aの見解では「反発係数が0.86を超えるクラブは現時点では存在しない」との立場をとっていることもあり「いくら誤差を考えても反発係数が0.86を下回ることはありえない」(某メーカーの技術責任者)ドライバーも、USGAに提出されると、反発係数が0.86未満として評価されて戻ってくるという現象が起きている。 穿った見方かもしれないが、すでにR&Aでルール適合とされているクラブを、USGAのテストでルール不適合とするわけにはいかず、少なくとも、ここ数カ月以内にUSGAに提出されるクラブはすべて適合クラブになるのでは、といった噂まで出ている。それだけに、測定値に誤差の出やすい反発係数のテストで、限りなく0.86に近い新ドライバーを開発するメーカーが発表を急ぐのも無理はないというのだ。 それにしても、ボールの飛びすぎを抑えるために生まれた反発係数規制。来年から5年限定とはいえ、米国内では逆に上限が引き上げられ、高反発ドライバー・ブームに火がつくとは皮肉な話である。