週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
「この歳で、まさかこんな大きなタイトルが獲れるとは、自分でも『信じられない』のひと言だね。何しろレギュラー時代を通じても4日間ずっと首位だった優勝も初めてだし、日本人メジャー初優勝って周りが騒ぐから、そうか凄いことしたんだなって。本当に嬉しいですよ」 帰国した当日、まだ優勝の余韻たっぷりに話してくれた須貝。レギュラーツアー時代、9年連続でシードを保ち、ツアー3勝を挙げている彼も、今回の喜びは格別だったようだ。 実はこの大会は3度目の出場で、昨年は初日2位の好発進ながら27位に終わった苦い経験がある。それだけに「去年よりいい成績、できればトップ10以内に入れればと考えていた。優勝なんて考えてもみなかった」 ところが、初日67でトップに立つと2日目も67で首位をキープ。最大で秒速20メートル以上の台風並みの強風が吹き荒れた3日目には、全英オープン5勝のトム・ワトソンが一緒の組で回って76を叩き、「コースに負けた」と力尽きるのをヨソに73で首位を堅持。ワトソンに「勝つにせよ、負けるにせよ、試合はもうミスター・スガイ次第」とまで言わしめるほどのプレーを見せつけ、2位に6打差をつけて最終日に臨んだ。 「でも、このコースは6打差なんて2ホールで追いつかれちゃうからね。余裕なんて全然なかったですよ。3日目終わったときに20ストロ-ク必要だなんて言ってたくらい(笑)。とにかく、我慢することだけ念じて自分のゴルフをすることに専念した。オレの技術じゃもうこれ以上できない、というぐらいやるべきことは全部やったよ」 結局、2位に2打差の3アンダーで88年のG・プレーヤー以来2人目となる4日間完全首位の快挙を果たしたのだ。 ところで、この大会では、優勝した須貝以外にも、現在欧州シニアツアーで賞金ランクトップをヒタ走る海老原清治、日本から挑戦した高橋勝成の2人もそろって5位に入る活躍を見せ、現地では「日本人のためのような大会」とまで評されたほど。 実際、このところの日本人シニアプレーヤーの海外での活躍は目覚しいものがある。5月に米シニアで4年ぶりの優勝を飾った青木功については、今さら記すまでもないが、弟分の海老原もその影響を受けて前述のように欧州で活躍。今年はすでに2勝を挙げて、目標の賞金王も十分狙える位置にいる。 もちろん試合数の少ない国内シニアツアーの現状から、仕方なく試合を求めて海外に出ているという事情もある。だが、自国ツアーの衰退が、より賞金の高い試合、新天地を求めてどんどん海外に出て行くという勝負師魂を呼び覚ましている皮肉な現状は否めない。 須貝もシニアの出場権が得られる50歳になる何年か前から、海外シニアツアーを目指して準備を始めた。国内ツアーの予選会よりも、そちらを優先したこともあるほどだ。そのかいもあって、この全英シニアオープンには3回出場して18位、27位とまずまずの成績を挙げ、これをステップに今回の勝利の美酒に結び付けている。 今回の優勝で、須貝は欧州シニアツアーのメンバー資格を取得、全米シニアオープン、全英オープンなどビッグな大会の出場権も手にした。とくに全英オープンには93年に1度だけ出場して予選落ちしており、来年は同じロイヤル・セントジョージズでの開催だけにリベンジに期待がかかる。 「アメリカのシニアは、これまでに一度Qスクールを受けて落ちてるし、今年も受けるつもりはない。全米シニアオープンのようなタフなセッティングなら別だけど、基本的にオレのゴルフは、距離があるアメリカより、風やラフなどタフな条件で争うイギリス向きだと思ってる。ツアーメンバーの資格が獲れたから欧州シニアツアーにはこれからもどんどん出たい」と須貝。 来年の欧州シニアツアーでは、日本人による激しい賞金王争いが演じられているのかも……。