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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 9/10号
2002年更新
5月の0.86規制提案を受け、キャスコが
反発係数対応の新ボール発売を決めたが……
 先週号(週刊GD 9/3号)で既報の通り、つい4カ月ほど前、米国ゴルフ協会(USGA)とロイヤル・アンド・エンシェント(R&A)が合意提案したドライバーの反発係数(COR値)規制が、最終合意案ではあっさり修正された。5年間の時限施行になると思わ(さ)れた「0.86案」は跡形もなく取り下げられ、規制値としては「0.83」だけが残った。しかし、提案とはいえ両団体の当初の発表が思わせぶりだっただけに、大きく振り回されたメーカーもあった。

 キャスコでは9月10日に2種類の3ピースボールを新発売する。「NEOスペック0830」と「同0860」。初期投入が30万ダースという、同社では過去最高のイチオシ新製品である。商品名にある「0830」と「0860」とは、いうまでもなく先の合意提案で示されたCORの規制値。それぞれ0.83と0.86のドライバーに、飛距離の点で最適用するよう設計されている。

 つまり、後者はフェースのたわみによる反発力が活きるよう、ボール自体はたわまない硬めの構造でコンプレッションは95。一方、前者はボール自体がたわんで反発力を生む構造でコンプレッションは85。従来のボールのコンプレッション設定がヘッドスピードにマッチさせたものであるのに対し、COR値に対応させるという発想の転換で誕生したボールだ。

 ところが、今回の修正により0.83というCOR値は残った(08年からの上限であり、上級選手の競技会に限っては来年から適用することもできる)が、0.86のほうは雲散霧消してしまった。

最終合意案には、正直、ドンデン返しの感があります」(同社・マーケティング室)とショックの色を隠せない。

 実際、先の提案で示されたCOR制限が実施されれば、ほとんどのドライバーがスペックで「0.83適用」とか「0.86制限クリア」と謳うことになったはずである。

 当然、それに対応したボールの存在はゴルファーの心をキャッチする……、はずだった。「販売計画の基本路線は変わりませんが、そのために新しくどのような売り方をすべきか、現在検討している最中なんです」(同スタッフ)

 ただ、一般アマチュアレベルでは07年までは反発係数制限がなくなったわけで、0.86前後のドライバーは以前出回ることになる。そのため、性能的にはもちろん何の問題もない。しかし、商品名やパッケージから「0860」の文字は消せない代わりにその数字が意味するところの、「0.83」より高い反発係数ドライバーにマッチした設計で飛距離が得られるボールであることを、どうすればスムーズにユーザーに伝えられるのか。キャッチコピーから広告デザイン等々、とにかくユーザーの目に触れるすべての面で、イチから構成しなおしている。

 こうした同社の対応に、同業者からも同情の声が大きい。「いくら提案とはいえ、USGAとR&Aはあのような形で発表すべきではなかった。その前に、告知期間を設けてメーカーから反論や実情を収集するなど、メーカーの声をもっと聞いてからにして欲しかった。今回の両団体の対応には、不信感が拭えないというのが国内メーカーに共通する正直な気持ちでしょう」(某メーカー広報)

 実際、キャスコのように「0.86」を直接意識した商品の販売にまでは至らずとも、少なくとも企画開発段階では、0.86という制限を意識した路線に急遽変更するなど、右往左往を余儀なくされたメーカーは多かったはずだ。

 さらに問題は、最終合意案で初めて示された「上級選手対象の競技(当然プロも含む)では来年からCOR値を0.83に定めることができる」という“競技”の線引きだ。

「その線引き次第では、マーケットのオピニオンリーダーであるトップアマも実質規制の対象になります。0.83を超えるドライバーはほとんどのメーカーが出していますから、規制の発表時期や導入の手順次第で、メーカーは大きな影響を受けると思います。どのメーカーも気が気ではないのでは……」と指摘するのはクラブデザイナーの松尾好員氏だ。

 各メーカーは、キャスコに同情している場合ではないようだ。

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