週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
一般に40インチ余の長さの中尺パターだが、同様の長さのパターはずっと昔からあった。 「うちでは60年代からありました。サム・スニードのサイド・サドルといわれるパッティングフォームも、使っていたのは長尺ではなく、今の中尺サイズに当たります」(ピンジャパン) また、長尺パターで有名な「リーディングエッジ」というメーカーでも、昔からこのサイズを揃えていたし、「スコッティ・キャメロン」でも6~7年前から同様のパターを作っていたが、そうしたパターは現在主流のフォーム用に設計されたものではない。 米ツアーではポール・エイジンガーが2年前から中尺パターを使っているが、彼の場合、グリップエンドを腹に当てず、普通にグリップする。また、左手でグリップエンドを固定し、右手一本でストロークするプレーヤーもいる。 もっとも一般的な、お腹でグリップエンドを固定する打ち方を最初に始めた有名選手はどうやらビジェイ・シンで、昨年からのようだ。今年からはフレッド・カプルスがこれに加わり、日本では井戸木鴻樹が一昨年から始めたのを皮切りに、一時期、横田真一も挑戦。片山晋呉や加瀬秀樹なども試している。 このフォームのメリットは、腕や手首の余分な動きを殺せること。グリップエンドが腹で固定されているため、いわゆる両腕と上体の三角形は一定に保たれたまま、手首とひじが曲がらないため上体の回転でしかストロークできない構造になっているからだ。 横田は「パター全体が重いので、緊張しているときも、ノーカンな感じでスムーズにストロークできる」と、このパターならではの利点を挙げる。イップス気味のゴルファーは軽いパターはデリケートすぎて扱えないし、ヘッドだけ重みが効いたパターもコントロールが難しくなるのだそうだ。重さのある中尺パターを、上体の大きな筋肉でストロークすることでイップスから逃れられるというわけだ。 「ツアー終盤のシード権争いとか、緊張して手が動かなくなりそうな試合でまた使うかも。アマチュアでも上級者でイップス気味の人にはいいと思いますよ」(横田) これまでパットに悩むプロが最後にたどり着くのが長尺と言われていたが、これからはその前に一度、中尺パターを試す選手が増えそうだ。通常のパターからいきなり長尺に替えるのは、余りにフォームが違い、違和感が大きすぎるが、中尺なら構えはほぼ変わらないので違和感なく取り組めるからだ。また、キャディバッグに収まる点も、試しやすい理由のひとつである。 実際、ツアー選手の間で試す選手が増えるに従い、米国のパター・メーカーが今年に入り、次々と中尺パターを売り出し始めた。 「ただ、米国ではあまり売れてないようです。この種のパターはパットに真剣に悩んだ人が手を出すもので、もともと需要の小さい商品。でも、うちではよく出てますよ」と言うのは、輸入クラブ専門のショップ「ミニボックス」経営の松本秀樹氏。 同じくピンジャパンでも「一部では入荷が間に合わないショップもあります。予想以上に好調です」と序盤の売行きを語る。米ツアーに関心の高いゴルファーや新しモノ好きに受けているのか。ただし、この中尺パターのメリットを十分に引き出すには、ちゃんとした練習が必要なようだ。 「買われたお客さんの話を聞くと、必ずしも評判はよくないんですよ。どうやら正しい打ち方がわからず、余分な動きをしようとして、失敗している人が多いようです」と松本氏。 中尺パターを使いこなそうと思えば文字通り“腹を据えて”じっくり取り組みなさい、ということのようだ。