週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
5月のUSGAとR&A合意提案では、R&Aはそれまでの方針を変更、条件付きでCOR規制を導入することでUSGAと合意。R&A傘下の日本でも来年からは一般ゴルファーもCOR値が0.86を超えるドライバーはルール違反となるとしたため、自社測定で0.86超を公表していたメーカーが数社あった日本の用品市場には大きな混乱を招いていた。 それが8月の最終発表では急転直下。5年間の期間限定の0.86の上限案は消滅、来年からは「上級プレーヤーを対象とする競技」のみ0.83の規制を導入できるとし、5年後の猶予期間を経た後の08年からは一般ゴルファーにも0.83規制を導入することになった。当面、各メーカーはひと安心となったが、問題はまだまだある。 まずそのひとつが、来年から0.83規制導入が可能になった“上級プレーヤー対象の競技”とは具体的にどの競技を指すのかという点。R&Aでは全英オープンには適用する予定とし、メジャーなプロツアー競技にもルール適用を推奨しているが、基本的に0.83規制を採用するかどうかは各競技の主催者の裁量で決まるもの。この点、JGA主催の競技については、つぎのように決定された。 アマチュア競技、日本女子オープン、日本シニアオープン、そして日本オープンの予選競技については採用しない。さらに、JGA主催以外の各種アマチュア競技、倶楽部競技についても、この規制を採用しないことを推奨するとしたのだ。ただし、男子の日本オープンに関しては、まだ結論が出ず、検討中に。 「5月の両団体の発表以来、国内の用品メーカー、ゴルファーへの影響が大きかっただけに、すでに決まった競技だけでも、早めに発表しておこうと考えました。今回、採用しないとした競技については、その平均的な飛距離からしてCOR値規制をしなくてもゴルフというゲームの本質を脅かすまでには至らないだろうというのがその理由。日本オープンについては、具体的な規制の運用方法についてもまだ議論の余地があり検討中ですが、遅くとも来年の大会の半年前くらいまでには結論を出すつもりです」(JGA事務局) また、一般ゴルファーには関係ないが、0.83規制の導入が予想されるプロの試合について、JGTO(日本ゴルフツーア機構)では、「基本的には世界の主要ツアーと足並みをそろえて統一見解を出す予定ですが、ルールの具体的運用方法が明確に示されていない現状ではまだ採用を決定できないのだと思います」(事務局) それにしても、各方面から聞こえてくるのは、実際にどうやって規制するのか、その運用方法を心配する声だ。プロは試合会場でロフトなどの微調整をすることは日常茶飯事。そうすればCOR値は微妙に変わり、現在USGAが行っているように「不適合ドライバー・リスト」を発表したり、あるいは「適合ドライバー・リスト」を発表しても、厳密には取り締まれない。さらに簡易測定器などを試合会場で使うとしても誤差が大きすぎて正確に測れないことなどから「結局、最終的にはプロの競技についてもCOR規制そのものが立ち消えになる可能性もあるのでは」(某メーカー開発担当者)といった指摘さえ出ているほどだ。 当面、一般アマとは無関係になったCOR問題だが、このままだと5年後からは0.83規制が導入される。プロだけでも大変なのに、全ゴルファーを対象にどうやって規制するのか? あるいは、そもそも一般アマにもCOR規制を導入する必要が本当にあるのだろうか? まだ問題は山積している。