週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
今回の台風の特徴は、雨よりもむしろ猛烈な風。それを象徴するのが、強風で倒壊した茨城県潮来市の送電線の鉄塔。そのせいで周辺20万世帯以上が停電、その被害世帯の中にゴルフ場もあった。潮来CCでは、翌2日は終日停電での営業となった(夜7時頃復旧)。 「いやぁ、20年前のゴルフ場を思い出しましたよ」とフロントのスタッフ。というのも、現代のフロント業務には欠かせないコンピュータが使えなかったからだ。そんな台風の翌日でも、2日は大型コンペがあり、平日にもかかわらず30組もの入場者があった。そのすべての受付からスタート、そして精算まで伝票と電卓をにらみながらの手作業でこなすことになった。停電の影響はあらゆる所に及んだ。 何人かのスタッフに聞いてみると、「コース売店のトイレが使えなかったことが一番困った。水の入ったバケツを用意してお客様に流してもらいました」、「ガスが使えないのでお風呂は閉鎖。タンクに残っていたお湯でシャワーだけは使えるようにしましたが、最後のほうは水でしたね」、「電話のシステムがダウンしたので代表電話が通じず、かなりご迷惑をかけました」等々、当日は各部門で大騒ぎが繰り広げられた。 「いかに電気に頼っていたかを痛感させられましたね。ただ、お客様にはご不便をおかけした分、コミュニケーションを図るようにしたので、かえっていい雰囲気になりましたよ」 雨降って、ならぬ「風吹いて地固まる?」ってところか。 同じく「かえってよかったのかも……」と振り返るのは、鬱蒼と茂った松林で有名な名門・大洗GC(茨城)。 「20本近い松が倒れましたが、大きなものではなく、被害は予想したよりもずっと小さかったですね」(渡辺支配人) それでも、飛び散った枯れ枝や小枝がコース一面をびっしり覆い隠し、プレー不能の状態に。そのため、翌2日はスタート時間を遅らせ、とりあえずフェアウェイ、グリーンから木の枝などを撤去した。 「集めた枝や枯葉は、当分片付けられないでしょう。時間をかけてじっくりやりますよ。でも、お陰で松林の枝はすっきり。日当たりがよくなったので、下草の成長には良かったのでは」 こうした悠長なことを言っていられなかったのは、先週、日本女子オープンが開催された箱根CC(神奈川)。大会がなければ、無理のないスケジュールで修復することもできるが、先週だけはそうもいかなかった。 「夜半過ぎには風雨も収まりましたが、一時はすごい土砂降りで、60個ほどあるバンカーのアゴの砂がほとんど流されました」(大会運営スタッフ) そのため、コース管理は深夜2時から総出で整備にあたることに。また、隣接する早川の水が溢れ、コース内に大量のゴミを残したため、2日は終日整備に明け暮れた。思いもかけず、日本で一番忙しかったゴルフ場だったのかもしれない。ゴルフは自然との闘いとよく言われるが、こういった闘いだけは御免蒙りたいものだ。