週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
優勝したレイコック、昨年母国のオーストラレイジアンツアーで1勝し、賞金ランク3位に入る実力者だが、日本では未勝利だったので馴染みが薄い選手。昨年の賞金ランクは14位、今年はこの試合が11試合目ながら予選落ちゼロ(棄権1試合)で25位と安定した成績を残している。 逆に言えば、いいところまで行きながら、いつも最後で勝てない選手だったわけだが、本人は「これまで何度か優勝争いで敗れたが、その経験が役に立った。先週、日本オープンで親友のスメイルが勝ったのも刺激になった。なかなか日本ツアーで勝てず“日本ツアー・コンプレックス”になってたけど、これでようやく肩の荷が下りた感じだ」と優勝の喜びを語った。 さて、この試合、出場選手が一番てこずったのがコーライグリーンだ。今季の男子ツアーでは、(毎年開催コースが変わる前週の)日本オープンの下関GCを除くと、フジサンケイの川奈、KBCの芥屋GCと、このブリヂストンの袖ヶ浦CCの3コースのみ。とくに、今年はスティンプメーターで9フィートと昨年よりも速く仕上がったにもかかわらず、前週が同じコーライで10フィートと速かったせいか、選手の感覚としては「例年よりも重い」(佐藤信人=練習日)、「この重さはアメリカにはない」(伊沢利光=練習日)といった声が、試合前から相次いだ。 そして毎年、このコーライグリーンこそ海外招待選手が勝てない最大の要因にもなっている。雨でとくに重くなった3日目、「初めての体験」と言うコーライで、「1メートル以内の短いパットを外しまくった」J・レナードもグリーン上でイライラしっ放し。コーライグリーンに打ちのめされたといえるだろう。 日本選手も「コーライ自体は嫌いじゃないけど、速いグリーンから重いグリーンへの切り替えが難しい」(深堀圭一郎)、「見た感じの距離よりも強めに打たないとと頭ではわかっているんだけどなかなか打てない」(加瀬秀樹)と皆苦労している。 それをカバーするためにいろんな工夫も見られた。多かったのが“道具”を工夫した選手だ。「(出身の)ハワイにはコーライグリーンのコースはない。重さよりも芝の読みが難しい。転がりをよくするために前週の日本オープンからパターを重くした」(D・ウイルソン)「いつもの330グラムのパターを350グラムと重くした」(D・チャンド) また、伊沢利光もこの試合からオデッセイの「2ボールパター」を使用したが、市販の物より重く調整している。 道具ではなく打ち方で対処した選手は“職人”横田真一だ。「テークバックを開き気味に上げることで、よりロフトを多くした状態でインパクトするようにした。そうすると、芽の影響を受けやすい、ボールの出だしであまり芽に影響されずスムーズに転がるから」 優勝したレイコックも3日目は「オーストラリアにもコーライグリーンはあり、日本のコーライより芽は強いけど、読みやすい。日本のコーライは読むのが難しいね。工夫といっても、ベントのときより強く打つだけ。それでも十分に打ち切れず、何回かカップの手前で止まることがあった。難しいね」と、他の選手同様苦しんでいたが、最終日の作戦変更が奏功した。 「今日は絶対ショートだけはしないと思っていたけど、強くヒットするとラインが外れてしまう。だからインパクトの強さは変えずに、ストロークだけ大きくすることを心がけた」というのだ。 ちなみに、このレイコックの優勝で、今季日本ツアーでは5人の初優勝者を輩出したが、その5人とも外国人選手で、依然日本人初優勝者はゼロ。ちょっと気になるデータではある。