週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
本誌でも報じたが、会員権を取得しながら入会せずに預託金の返還を求めて提訴し、お金を儲けようとする「預託金返還訴訟ビジネス」にノーを突きつける判決が相次ぎ、ゴルフ場経営会社の間に安堵の声が広がったばかり。そこへ今度は、債権回収専門会社が預託金の回収に乗り出す、という記事が大手経済紙に掲載。すわ、一難去ってまた一難、と受け止められても不思議ではない。 サービサー(注)も、以前は金融機関からしか債権を買うことはできなかったが、昨年秋の法改正で、破産、民事再生、会社更生などの法的手続を取った会社なら一般の事業会社からでも、債権を買ったり回収を受託してもいいことになった。売掛金や貸付金等とともに、法人ゴルフ会員権もその法的倒産会社が持っている債権のひとつなので、買い取り対象にできることになったというわけである。 従って、「新聞ではゴルフ会員権に特化するような形で取り上げられましたが、ゴルフ会員権は買い取り対象の債権の一部という位置付け」(東京債権回収・専務取締役・中島龍成氏)だと言う。 破産会社には破産管財人がいて、資産を処分して現金に変え、最後に債権者に配当するわけだが、いつまでも買い手がつかず、資産が売れないと破産手続きが終わらない。ゴルフ会員権の場合、名変停止中でなければ市場で売ればいいし、名変停止中でも人気コースや、交渉次第で預託金が一部でも返りそうなコースなら念書売買で処分できるから、破産会社も処分に困らない。従ってサービサーの出番はない。 結局、名変停止中のコースや、念書売買でも買い手が付かない会員権が対象になるが、逆にそれではサービサー側が、せっかく買い取っても預託金を回収できないことになるという矛盾に陥ってしまう。買い取り対象となる会員権とは、一体どういうコースになるのか? 「確かに相場が立っているコースや、親会社がしっかりしていて交渉次第で一部預託金が返ってきそうなコースの会員権は、破産管財人が自分で売却できるので我々の出番はない。回収できそうもないコースこそが我々の出番なのです」(中島氏)。 実は、売り手である破産会社にとっては、値段はどうあれ、ともかく処分することが大切なので、「回収できそうもないものはタダ同然で引き取っても歓迎される」(中島氏)。 そして、破産会社からひとまとめにして買った他の債権で予定以上の回収ができればそれでもOKというわけだ。 数年前、公認会計士の安部忠氏が、個人の会員権保有者を対象に『不良会員権買取機構』をブチ上げたことがある。保有している会員権のコース経営会社が倒産すると、法人ならそのまま損金処理できて納税額が減るのに、個人だとこの恩典がなく、誰かに売って譲渡損を出さない限り損金処理できない。そこを救済する目的で、個人からタダ同然で倒産ゴルフ場の会員権を買いとって損金処理できるようにする、というシステムだったが、結局、国税が損金処理を認めず頓挫してしまった。 今回は裁判所管轄下の破産会社と、法務省の免許事業者間の取引になる。 「当社はもともと数多くの弁護士にルートがあるので、買い取り案件の紹介はそのルートを見込んでいます。無論、法務省から許可を得て営業しているのですから、無茶な回収をするわけにはいきません」(同)。 無茶な回収に乗り出せばかえって余計なコストがかかりかねない。実際の買い取りはこれからだが、一連の預託金返還訴訟ビジネスのように、ゴルフ場経営者たちを震え上がらせるような存在となることはなさそうだ。 (注)サービサーとは? 法務省から許可を受けて設立された債権回収専門の会社で、現在60社を超える。委託を受けて回収を代行したり、債権を買い取る会社。ゴルフ場を次々と買収しているローンスターグループのハドソン・ジャパン債権回収もそのひとつ。