週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
既に今季の賞金女王を決めているソレンスタムは、この優勝で今季米ツアー22戦10勝、ほぼ5割近い驚異的な勝率となった。 今年に入り、一見してわかるほど体格がよりガッシリしてパワーアップ。実際、昨年より平均飛距離は13ヤードも伸びている。これについて本人は、「ボールとクラブを替えたのに加え、トレーナー(ドイツ人のカイ・フッサー氏)のもとで今年から重い負荷でのウェートトレーニングを始めた。しかも、これまでは、オフはきつく、シーズン中は軽めにやっていたのを、今年はシーズン中も同じトレーニングを続けている。それにより、長いクラブのときもダウンスウィングでクラブがフラつかず軌道が安定するようになった。また、18ホール集中力を保てる体力もついた」と言う。 それにしても、これだけの記録を残しながら、どうやって高いモチベーションを保ち続けることができるのだろうか? 「私はもっといいゴルフをして1打でも平均スコアを縮めようとつねに思っている。ドライバーの正確さとアイアンは問題ないけど、まだまだショートゲームでは、打ち方にバリエーションが足りない。もっと想像力を使っていろんな打ち方ができるようになりたい。その辺の技術的なことは16歳のときから私のコーチであるヘンリー・ライス氏(スウェーデン)にここ数年、教わっている」とまだまだ“発展途上”だというのだ。さらにメンタル面でも、「とくにコーチはつけていないけど、私はプレー中、恐れるということはない。ボールに向かって立つと、いいショットが打てることを考えるとワクワクするし、どれだけいい結果が出せるかトライするのも楽しい」 そのメンタル面の強さが、最終日、5番ホールでダブルボギーを叩いた最大のピンチの後も、その怒りを次のホールへの原動力に結びつけ、すかさずイーグルを獲るという離れ業をも生んだのだろう。 また、今大会で目を引いたのが、今の米女子ツアーを象徴するかのような韓国勢パワーだ。この試合でも、あたかも“ソレンスタム包囲網”を敷く格好で最後までソレンスタムを脅かし、2、3、4位を占めた。その強さについて、日米両ツアーでの実績を持つ小林浩美に聞いてみた。 「これは国民性の違いだろうけど、周りの目を気にする日本人に比べ、彼女たちは“大陸的”というか、気が強くて、いい意味でマイペース。皆、攻撃的なゴルフで、逆にそうでないとアメリカのツアーでやっていけないですよ。それと、同じ年代のパク・セリの活躍を見て『彼女ができるなら私も』と、いい意味で刺激を受けたんだと思います。また、韓国人選手は皆、順応性に優れ、簡単に米ツアーにも慣れています。ほとんどの韓国人選手がそうですが、ツアーを転戦するのに皆、両親や兄弟など家族が結束して行動をともにしていて、それが寂しさを解消したり精神的にも支えになっているんだと思います。もちろん、韓国のツアーの賞金が低く、海外に行かざるを得ないという事情もあるでしょう。ただ、アメリカより近くて稼げる日本ツアーがあるのに、アメリカに目が向くということは、どういう気持ちでゴルフに取り組んでいるかということ。もっと強くなりたいというモチベーションの高さだと思います」 一方、2日目までは不動、福嶋ら上位に実力者も何人かいた日本勢だが、終わってみればトップ10入りは5位タイの藤井かすみただひとり。世界とのレベルの差に加え、躍進著しい韓国女子ゴルフにもますます水を空けられたことを痛感させられた試合でもあった。