週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
「タイガーの驚異は続いている」と語るのはPGAツアーのT・フィンチェム・コミッショナーだが、問題はウッズの独壇場がいつまで続くか。そして、C・ストレンジが言うように、本当に「ウッズと他の選手のギャップが埋まりつつあり、ツアーの底辺がさらに広がっている」のかどうかという点だ。 確かに、数字だけ見ると、トップグループとタイガーの差は縮まっている。実際、過去最高の成績を残した2000年は、賞金ランク2位のP・ミケルソンに賞金で400万ドル強、平均ストローク数でも、ウッズの67.79に対してミケルソンの69.25と平均で1.5打近くも差をつけていた。これに対し、今年は賞金では2位のミケルソンに約260万ドル、平均ストローク数でも2位のV・シンに0.91打とその差は縮まっている。 確かに新旧交代の流れは激しく、2年前には賞金ランク4位だったH・サットンは今年153位、昨年14位のJ・デュラントが137位、D・フロスト(126位)、C・スタドラー(127位)、C・ペイビン(148位)など、かつての名手たちもシード権を逃している。その一方でC・ハウエルIII(9位=23歳)、S・ガルシア(12位=22歳)、J・バード(39位=24歳)、マット・クーチャー(49位=24歳)らタイガーの次世代グループも着実に実力を上げ、PGAツアーは全体としてはレベルが底上げされる一方、その底辺も、総勢なんと18名の初優勝組を輩出するなど、確実に広がっていることは間違いがない。 日本勢も、丸山茂樹が日本人最高の賞金ランク16位。横尾要こそ130位と惜しくもシード獲得を逃したものの、今季が初のフル参戦だった田中秀道はランク92位と、日本勢全体としては過去最高、つまりタイガーとの実力差を徐々にだが、埋めていると言えなくもない。 ただ、タイガーと他の選手との実力差の接近については、ツアー全体のレベルアップもさることながら、タイガー自身の調子によるところもあるようだ。 メンタル面の強いタイガーの集中力については、今年、一体どうしたのか、と思わせる場面が何度かあった。全英オープン3日目の「81」は、誰もが知っている通りだが、今年のタイガーには、4日間の試合で1日、なぜか集中力に欠ける場面がよく見られた。実際、オーバーパーのラウンドは、一昨年は19試合中4ラウンドだったのが昨年は19試合中9ラウンド、今年は17試合中11回へと増えている。 また、1試合中のワーストスコアとベストスコアの差も、昨年は平均5.21だったのが、今年は6.35と大きく広がっている。 加えて、今季最終戦、ツアー選手権で明らかになった左ひざの問題。ウッズはスタンフォード大学時代の94年に左ひざの手術をしているが、「このところずっと痛かったけど、あのショット(最終日15番のアプローチショット)時にはビリッと来た」と、ひざに故障を抱えていたことを自ら明らかにした。 前述したように今季何度か集中力が欠けたのはこのひざの痛みにも原因があったのかもしれないし、丸山同様、寒さに強くないというのもひざの問題と関係しているのかもしれない。 それにしても、そんな問題を抱え、決して絶好調のコンディションでないにもかかわらず、メジャー通算8勝、米ツアー34勝、4年連続の三冠王を達成するのだから、ウッズが怪物であることには違いはない。今後このウッズの独壇場は何年続くのだろうか。