週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
87年の米女子ツアー賞金女王として、樋口久子会長以上に協会の顔ともいえる岡本の辞任。理由は「プレーヤーと協会の仕事を両立できない。これではどちらも中途半端になってしまう。プレーに専念したい」というもの。これは理事たちにとっては寝耳に水の出来事だった。 「理事会の前にご本人からメールで知らされましたが、びっくりしました」と鈴木美恵子広報委員長が語るように、衝撃的な決断に誰もが驚きを隠せない。 だが、岡本本人にとっては、急な話でも何でもなかった。93年から理事職に就き、97年からは副会長を務め、多忙ではあったものの、今年のそれは半端ではなかった。来年からツアーとしての体制を整えるべくTPD(トーナメント部門)とGBD(インストラクター部門)を切り離してスタートさせる協会のTPDの責任者として、環境整備に奔走。 「年間100日は拘束していると思います。他に試合中なども顔を見れば仕事をお願いしたりするので、もっと働いてもらっていると思う」と協会事務局が言うほどの激務。これと本業であるプレーヤーを両立させようというのだから体がいくつあっても足りないかったはずだ。 今季17試合に出場、終盤7試合で予選落ち4回、棄権1回、賞金ランクは57位に終わった岡本が、苦悩の日々を打ち明ける。「今年になってから、とにかく忙しかった。練習したい、トレーニングしたいと思っても、会議があったり仕事があったりで思うようにならない。何時間も座ったまま会議をして、水曜の朝、コースへ行っていくらストレッチをしても体は戻らない。そんなことの繰り返しだった」 51歳でいまだ現役トッププロ。理事職と板ばさみになり、ボロボロになった。「これでいいのかな、私はこのままでいいのかな、とずっと思ってた」。 自問自答の日々。そんな毎日に自ら答えを出したのは意外に早かった。「やっぱりきちんとゴルフがしたい、そう思って(辞任を)決めたのは夏ごろだった」 心にしまいこんでいたその気持ちをシーズン終了を待って、ようやく表に出した。 「最初、樋口さんには『これ(辞表)は受け取れないわよ』と慰留された。でも、私の気持ちは変わりません、と伝えた」という固い決意に樋口も折れた。 「協会の役目は女子プロをサポートしていくことなので、選手がそれ(プレーすること)を希望するなら、応援していきたい」と、樋口は辞任が承認された理事会終了後にコメント。定款に則り、来年2月14日の総会で岡本の穴を埋める新理事を選挙で決める。 それにしても今回、岡本の辞任で明らかになったのは、やはり現役選手と協会理事の二足のワラジは難しいという事実。来年には部門別の新体制がスタートするが、会員が増え、賞金も拡大した今、旧態依然のまま会員(=プロ)が理事として運営に携わっていく状態をこのまま続けていくことが適切なのか。その道のプロをツアー部門のトップに迎えることを検討してもいいのでは。以前から言われてきたことだが、改めてそんなことを考えさせる今回の岡本の“辞任劇”だった。