週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
長引く景気低迷による税収不足で、発泡酒やたばこなどの税率アップ、配偶者特別控除の廃止など、増税ばかりが注目された今回の自民党税制調査会。実際に減税項目は政策減税ばかりで、規模も小規模。そんな中、一部ゴルファー対象とはいえ、ゴルフ場利用税の非課税が大綱に盛り込まれたのは、ゴルフ場利用税そのものの意義を問うきっかけになったと評価することができるだろう。 自民党税制調査会副会長で、ゴルフ振興議員連盟にも名を連ね、「ゴルフにだけ税金がかかっている状態がそもそも異常」と主張する衞藤征士郎代議士によれば、「私の周囲ではゴルフをやっている人は皆健康で、病院に行く人はあまりいない。ゴルファーから税金を取るという発想から一歩進んで、ゴルフが盛んになるようにすることは国益にも沿うこと。今回、要望の100パーセントとはいかなかったが、今後はそうした観点からゴルフ場利用税の廃止を訴えていきたい」とする。 衞藤代議士の言うように、JGAを中心としたゴルフ関連団体の要望がすべて通ったわけではない。具体的に非課税の対象は、(1)障害者、(2)18歳未満、(3)18歳以上でも学生及び教員(保健体育の実技、または公認の課外活動時に限る)、(4)70歳以上、(5)国民体育大会の参加選手。これに対し業界団体の要望は内容は、20歳未満及び学生、シニアは65歳以上となっていた。さらにゴルフ場利用税の標準税額を現行の800円から400円への引き下げも求めていたが、これについては見送られた形になった。ゴルフ場利用税の総額は、昨年度で約870億円。実際に業界の要望がすべて通っていたら数100億円規模の減税が実現していたが、今回発表の大綱に従えば30数億円程度になりそう。それだけに、同税が存在する不条理は認めつつあるものの、とりわけ地方自治体の財源不足を考えれば、「ここまでが限界」との政治決着となった感は否めない。 この点について、ゴルフ場利用税廃止運動推進本部事務局の鈴木知行氏によれば、「あくまで緒についたものであり、廃止運動への大きな一歩と考えている。税制調査会では“国民10人に1人のゴルファーの意見を無視していいのか”といった意見も聞かれ、最終的には過去5年間の840万人の署名が大きな前進を可能にした。今後は医療費の問題、あるいは固定資産税との関係、さらには森林保全といったゴルフの持つメリットをデータとして示すことで、最終目標である利用税廃止の運動を展開していきたい」 単に税金の問題としてでなく、スポーツとして文化として、あるいは国民の健康問題として、利用税廃止運動は「ゴルフのあり方」を政治に問う、第二局面に突入したようだ。