週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
過去にも同様の被害はあったが、暗証番号を押す際に隣から覗き見されたのが原因で、被害者の自己責任が大だった。ところが、昨年の夏頃から関西で頻発した盗難はそうではない。暗証番号を入れるキーの天井部分に超小型のカメラを貼り、暗証番号を遠隔操作で盗撮、客がプレー中に貴重品ロッカーを開けるという巧妙な手口なのだ。 東近畿地区ゴルフ場支配人会の森修一防犯委員長によれば、「昨年の夏頃、奈良県のあるゴルフ場で数人のお客の貴重品ロッカーで盗難に遭い、財布に入れてあったキャッシュカードやクレジットカードでお金が下ろされるとういう被害も出て、なぜそういう盗難が起きたのか謎でした。ところが、昨年11月に同じ奈良県のヤマトCCで超小型カメラが発見され、手口が明らかになったのです」 同CCの堀内照久支配人によると、「昨年11月初旬、1日に5名も被害に遭ったのです。お客さんが暗証番号を忘れたときに、従業員が開けることがあるので、過去に辞めた従業員とか、現在いる従業員にも警察から疑いの眼がかかったのです。しかし、朝の8時半くらいから9時半くらいまでの短時間の盗難ですから、時間のかかる特殊な開け方で、これだけの数を従業員がやるには不可能。そこで、もっと簡単に開ける方法がないかメーカーに問い合わせたら、これまですでに超小型カメラを使った盗難があったというじゃないですか。なぜ、そんな大事な情報を早く流さないのか。メーカー側の無責任さに怒りが込み上げてきます」 堀内支配人の怒りもごもっともである。しかし、この小型カメラ、ちょっと見て触っただけではわからないほどだとか。 「メーカーからの情報を得て手で触ってみましたが小型カメラの存在を確認できませんでした。そこで、改めて懐中電灯で照らして初めてわかったほどです」(前出・堀内支配人) ちょうど携帯電話のバッテリィーほどの大きさと厚さで、強力な両面テープで貼り付けてあったという。電波は10メートルくらい飛ばせるため、おそらく数人のグループが連携してモニターを見て動いたようだ。被害は現金が5名で平均5~6万円くらい。さらにキャッシュカードで1人約100万円、キャッシュローンで30万円くらいの被害があったという。それもこれも貴重品ロッカーの暗証番号とキャッシュカード等のそれが同じだったためで、つい同じ暗証番号をどこでも使ってしまう心理を上手く利用したもので、現金よりキャッシュカード等のお金が本来の目的とも思われる。 さらに、最大の被害が奈良県の某ゴルフ場で出た。 「支配人会の防犯委員会からの通達でカメラを使った盗難事件は知っていたので極力注意していたのですが、12月の日曜日、混雑してる間に8名がやられました」(某ゴルフ場支配人) 現金が8名で110万円。キャッシュカードによるものでは、1人が4行から1288万円引き出され、それにキャッシュローン等で4名が約400万円。つまり、1700万円ほどの大被害に遭ったのである。 「5つのゴルフ場で約2200万円の被害。今後、絶対起きないように、貴重品ロッカーをフロントから見える場所に設置する、見えない場所に置く場合には数多く巡回し不審者をチェックする、といったことを指導していきたいと思っています」(森防犯委員長) ところで、今回は被害金額をゴルフ場側が補償したようだが、法的にはどうなるのか? ゴルフ場関係の法律に詳しい宅島康二弁護士に聞いてみた。 「難しい問題です。ボックスを管理するゴルフ場側の責任もありますが、ボックスの中のお客の財産まですべて責任を負うということはあり得ません。通常ゴルフプレーに行くときに所持する金額程度まで補償されると考えるのが妥当だと思います」 貴重品ロッカーに預けるのさえ、ゴルファーには自衛策が求められるということか……。