週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
しかし、驚くべきはその勝率よりもゴルフの内容。なにしろ今年の5戦で、トータル100アンダー。昨年からの6戦だと、121アンダーと完璧に“ゾーン”に入っている。米ツアーの開幕戦、メルセデス選手権で31アンダーという、米ツアーでの、72ホールの記録を打ち立てたかと思ったら、今度は、2位に10打差をつけて優勝したジョニーウォーカークラシックでは、54ホールで23アンダー、72ホールで29アンダーという欧州ツアー20年来(従来の54ホールの記録は75年のV・フェルナンデスの22アンダー、72ホールの記録は84年にJ・アンダーソンの27アンダー)の記録まで塗り替えているのだ。となれば当然、賞金ランクはもとより、平均ストローク数でも、米ツアーで67.66、欧州ツアーでも67.58で、両ツアーで単独トップ。 「アーニーのこの3カ月の彼のゴルフは、過去誰も成し遂げたことがないものだと思う」と語ったのはS・ガルシアだが、この絶好調の背景に関しては、エルスが今年から使い始めたドライバーとボールにあるという説が米国では有力だ。 というのも、一昨年285.8ヤード、昨年は281ヤードだったエルスのドライバーの平均飛距離が、今年は米ツアーで319.6ヤード、欧州ツアーでも314.5ヤードと、一気に30ヤード強も伸びているからだ。さらにフェアウェイキープ率も昨年の64パーセント、ランキング162位(米ツアー)に対して、今年は136位、欧州ツアーでも昨年の60.4パーセント(99位)に対して、今年は72.1パーセント(32位)と、ただ飛ぶようになっただけではないのだ。 エルス本人は、今年から使い始めたタイトリストの983Kについて、「初めてこのドライバーを打ったのは昨年末だが、凄い飛距離でフェアウェイの真ん中に飛んでいったんだ。この飛距離には他の誰よりも自分が驚いている。テーラーメイドのドライバーが一番飛ぶと思っていたけど、それは間違いだった」なんて語っているのだから、「完璧に自分のスウィングに合ったクラブ」を見出したといえるのだろう。 もっとも昨年末、1試合で200万ドルを稼いだネドバンクチャレンジでは、最終日コースレコードの63を出して、C・モンゴメリーを8打差で下しているのだから、一概に用品ばかりのせいともいい難い。 エルスは過去数年来、インパクト時、手首の返しのタイミングの調整に悩んでいたが、「今のゴルフは、これまでプレーした中で最高のゴルフ。すべてが噛み合ってきている」(エルス)と言い、もともとの調子の良さに加え自分に合ったクラブを見つけた相乗効果ということなのだろう。 ただ、エルスが勝ったこの5試合に左ひざのリハビリで療養中だったタイガーは出場していないわけで、先のビュイック招待でひさびさの出場ながら優勝したタイガーとの一騎打ちはこれから本当に楽しみだ。エルス本人は、「タイガー対自分というより、コースと戦い、自分は自分のゴルフをするだけ。でも、今のゴルフなら参加選手にどんなプレーヤーがいても、かなりチャンスはあるはず」と、なにやら発言までタイガーに似てきている。 今月末のWGCマッチプレーでは、シードが1位と2位のタイガーとエルス。順当に勝ち残れば、決勝でこの2人が対決することになるのだが……。