週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
この測定器の変更は、一般アマチュアにとっては、さほど影響はなさそうだが、ツアープロには、少なからずインパクトを与えるものと見られている。というのも、今年からR&Aも導入、全世界的に採用された、ドライバーのクラブフェースの反発係数を0.830までとするスプリング効果に関する新ルールは、一部では、現場で抜き打ちで計測できない以上、ザル法とも言われているからだ。つまり、フェースの反発係数は、ロフトなどによっても変わることから、USGAなりR&Aが、一度認定しても、その後、選手が調整をしてしまえば違反になる可能性は十分にあり、そこまで規制できないのが現状だ。 米ゴルフワールド誌によれば、あるメーカーのプロ担当は、「会社が測定したところ、競技プレーヤーの60パーセントが0.830のリミットを超えるドライバーを使用していた」というのだから、トーナメント会場で「試合前と優勝者のクラブはテストされるべき」というピンの社長、J・ソルハイム氏の提案が実現すると、青くなるプレーヤーが続出する可能性まであるというわけだ。 実際、米ツアーでは、飛びすぎるクラブやボールに対する懸念が、いろんな方面から出始めている。なにしろツアープレーヤーの平均飛距離が270ヤードを超えたのが98年で、昨年は、279.8ヤード。今年は288.9ヤードにまで伸びている。もちろん、ドライバーだけが飛距離アップの原因とはいえないだろうが、「アマチュアとプロの用品において、異なった制限を設ける時期に来ているのかもしれない」とPGAツアー・コミッショナーのT・フィンチェム氏が発言するところまで来ている。それだけに、トーナメンント会場でもクラブヘッドをシャフトから外さずに簡単に反発係数が測れる簡易測定器に期待がかかるのにも頷けるものがある。 ただ、待望されていたものの、今回発表された振り子式テスターには、問題点もないではない。この新テスターは、振り子になった金属球をクラブフェースにぶつけ、その接触時間を測定するというもの。250マイクロセカンド(100万分の1秒)というのが、現在の反発係数の上限である0.830に非常に近く、これ以上の接触時間だと、違法クラブになるというわけだ。 USGAのテクニカルディレクター、D・ラギー氏によれば、「ポータブルな上に、非常に正確に測れる」ということだが、その一方では「これまでのテスト方法と異なることから、数値を同じ基準で判断することはできない」(某メーカー会長)といった批判もあるのだ。 確かに、異なるテストで0.830の反発係数と250マイクロ秒が同じだといわれてもしっくりこない。しかも、テストがシンプルになった分だけ、テストの精密度が犠牲になることも予想される。USGAでは、テスト方法が変わっても、これまで認定されていたクラブが違反になることはない、としている。つまり、測定精度が悪くなる分だけ、測定の誤差範囲の許容度も広がっているはずで、実質的には、反発係数の0.830を若干超えるものも、認定されるケースが出てくる可能性が高いといえるかもしれない。 加えて、USGAもPGAツアーも、このテスターが採用されたとしても、今のところ、まだ実際のトーナメント会場で、クラブテストの義務付けるかどうかは未定としている。それでは、何のための簡易測定器なのかということになるが、まだ試作品段階では仕方ないか。ゴルフ界では、この新テスト器を巡って、しばらく熱い論議が続きそうだ。