週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
まず、昨年の賞金ランクベスト3を中心に今オフの過ごし方を見てみよう。賞金王の谷口徹は2月開催のビュイック招待から3連戦をこなす予定で渡米したが、去年の11月以来の原因不明の体調不良のため急遽帰国。その後入院、検査を受け、いきなりマスターズから復帰の予定だという。病状の回復が待たれる谷口にとっては開幕の遅れは好都合といったところか。 ランク2位の佐藤信人は、今オフは右肘の剥離軟骨の除去手術を行った。回復は順調で、その後は恒例の井上透コーチ主催の合同合宿を米山剛、福沢義光らとともに1月最終週から10週かけて行った。3位の片山晋呉は1月19日から末まで地元・栃木県下館で合宿。2月には沖縄でラウンド中心に2次合宿。試合は2月のアクセンチュアマッチプレー、3月の欧州ツアーのドバイデザート、TPC(予定)を経て、マスターズに照準を合わせている。日本の出場は中日クラウンズからの予定。 他の主な選手の動向は、伊沢利光が1月8日~13日まで江連忠コーチと福岡で合宿。その後も筋トレ、ラウンドを福岡の自宅周辺でこなし、2月のニッサンオープン、アクセンチュアに出場、4月のマスターズに照準を合わせている。ジャンボ軍団は恒例の習志野キャンプを1月10日から開始、3月10日から22日まではラウンド中心の沖縄キャンプ。昨年暮れのアジア沖縄オープンで優勝、その獲得賞金は今季のランクに加算されるため、シーズン開幕前にすでに一歩リードしている藤田寛之、芹澤信雄、宮本勝昌らは2月中旬~末までハワイ合宿、その後、葛城GC(静岡)でミニキャンプ。加瀬秀樹、宮瀬博文ら雑草軍団は2月17日~3月初頭までグアムでキャンプ。 ところで、今年は昨年より開幕が3週間遅れたが、プロたちはこの3週間を「好機」ととらえたのか、それとも「空白」ととらえたのか? 佐藤信人の場合、1月の右ひじの手術のことを考えると長いオフは結果的に良い方向となったが、「期間が空きすぎて試合勘が鈍ってしまうはのは辛いが、選手によっては海外の試合に出ることでそういった空白を埋めている。でも自分の場合はまだスウィングに自信がなく修正したい点もあったので、国内で井上コーチと改造に専念した」とのこと。 初シード組の星野英正は、以前はこの時期は試合に出たりスウィングを作ることが多かったが、「長いオフになったことで、トレーニングジムで身体造りに専念できた」と言う。湯原信光なども「ゆっくり身体とスウィングを作れた」と、同様の意見は多かった。 海外の試合に照準を合わせて今年の長いオフを調整したというのが片山と伊沢の2人。片山は、今年は約1カ月早くトレーニングをスタート。マスターズまでは海外の試合に照準を合わせ、ワールドランク30位以内が目標と、完全に海外に照準を合わせた形。伊沢も1月8日スタートは例年よりやや早めで、これも2月初頭の試合からマスターズまでの流れを頭に入れた調整で、逆に3月に国内の試合がなくなった分、海外に集中できるということだ。 他に今野康晴、近藤智弘などは米ツアー、川原希や今井克宗は豪州ツアーの試合に参戦、試合勘を磨いた。今後この期間は、トップの選手は海外での試合に出ながら調整、マスターズに照準を合わせるというパターンが定着しそうな気配だ。 一方、室田淳は「若いトップの選手はこの時期も海外で戦う場があるけど、僕たちベテランを含め、そうでないプロにはそういう機会が限られる。その上オフの期間が長くなればなおさら試合勘が失われ、差が広がるばかり」とも。今後もオフが4カ月近くも続く状況が変わらなければ、野球でいうオープン戦のような感覚で地区オープンを開催しては、という声もチラホラ聞かれた。 今年の長いオフは、スウィング改造や身体をじっくり作るプロには「好機」、マスターズ組には「2シーズン制的な期間」、ベテランや中堅以下のプロのように出場可能な試合が少ないプロにとっては「長い空白」になったようだ。