週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
昨年4月施行の中間法人法で、任意団体も法人格を持てるようになったが、その第1号は美奈木GC(兵庫)の会員組織だった。中間法人が預託金総額に相当する150億円の抵当権をゴルフ場施設に設定、安易な法的整理をしないとの経営姿勢を示すものとしてスタートしたが、償還圧力を抑えきれず、1月、親会社が民事再生法を申請。結果的に民事再生計画の中で中間法人を活用する模様だが、実は早くから「中間法人は法的整理と併用して意味がある」との意見が法曹界にはあった。 そんな中、民事再生計画の中で初めて中間法人を活用したのが石坂GC(埼玉)。昨年7月に民事再生法を申請した大日本土木系列で「(石坂GCの経営会社の)鳩山スポーツランドは、単独で数年前から中間法人での再生を視野に動いてきた。大日本土木の民事再生は、寝耳に水で、結果的に直後の申請になった」(岡田繁社長)と言う。 石坂GCは大日本土木に対して債務者だったが、鳩山スポーツランドが大日本土木に5億円を支払い金融債務を解消、さらに鳩山スポーツランドの全株式を、設立した「有限責任中間法人石坂クラブ」が所有。中間法人を構成する社員は会員で、間接的ながら会員が全株を持つ完全株主会員制を実現した。ちなみに大日本土木に支払った5億円は会員550名が年会費10年分(48万円)の前納に応じ、不足分は新規会員募集で調達する。 また、4月の債権者集会で、民事再生計画の可否が問われるのはダイヤグリーンC(茨城)。計画では、一般債権者及び退会会員については85パーセントの債権カット。継続会員は、平成25年から税引後利益の50パーセントという条件付きで預託金の80パーセントを保証。会員は今後、中間法人の社員になり、中間法人は経営会社の40パーセントの株式を所有、また中間法人理事の中から経営会社の取締役、監査役が1名づつ選任される。 石坂GC、ダイヤグリーンC双方の申請代理人である服部弘志弁護士は「中間法人が所有する、経営会社の持ち株比率は、ゴルフ場が抱える事情によって異なるが、100パーセント中間法人が株主となる場合には、会員の中に経営のリーダーシップをとれる人材がいるかどうかがポイント。経営はプロに任せたほうがスムーズにいくが、経営者の独走を許さないためにも3分の1以上の株式を会員側が所有するのが得策」と説明する。 一方、会社更生計画の中で中間法人を活用するのが清川CC(神奈川)だ。一昨年5月、経営会社が民事再生法を申請後、外資のローンスターがスポンサーに名乗りをあげ、これに会員が反発、現在の「有限責任中間法人清川クラブ」の前身となる守る会が生まれ、会社更生法で対抗した。守る会では出資金(正会員は150万円)を募り、約25億円を集めスポンサーになった。更生計画ではこれを原資に担保権、労働債権を解消、2.6パーセントを全会員に一括弁済。そして(株)清川CCの全株を中間法人が所有。やはり間接的に会員は全株を所有することになり、当然中間法人が経営会社の役員を選出する。代理人の今井征夫弁護士は「自分たちのゴルフ場をなんとかしたい、との愛着が清川の財産。そこにタイミングよく、中間法人法があった」と説明する。 さて、今後も法的整理の中で中間法人を活用する例が増えるだろうが、株式の所有率、ゴルフ場施設に担保を設定するかどうかなど、会員の権利を守る具体的な方法は、資産状況や経営姿勢などによって違いが出ることは間違いなく、会員にとっては計画を注視することが求められそうだ。前出・服部弁護士は「会員、会社双方にとって、中間法人のデメリットはまず思いあたらない。単なる預託金対策という消極的な理由でなく、中間法人を通じ、自分たちの総意をクラブ運営に反映できるといった、夢を与えられるかがポイント」と話す。 石坂GCや清川CCでは、会員が資金を拠出、ゴルフ場の危機を救っている。仲間意識とともに「自分たちのクラブ」との強い意識が、中間法人を活用する現実は見逃せないだろう。