週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
同時多発テロのときもそうだが、非常事態になると、アメリカ国内では、それまでの経済問題や内政問題などが棚上げされ、一気に大統領の支持率がアップ、一種“アメリカ教”ともいえるような世論が形成される傾向がある。仮に戦争が長引き、ベトナム戦争のような泥沼状態になれば話も違うのだろうが、少なくとも、戦争初期には少数意見が影を潜めて、世論が右傾化してしまう。そして、そうした右傾化の影響が、例のオーガスタナショナルの女性入会問題にも微妙な影響を与えている。 「戦争によって、マスターズが中止されるようなことにならない限り、私たちは抗議に行く。しかし、私たちが伝えるメッセージは、多少変わるかもしれない。戦争が起こらなければ、オーガスタをおちょくるようなメッセージにするつもりだったが、戦争の期間中だと、時節柄ふさわしいものであるかどうか何とも言えない」などとNCWO(米国女性評議会)のM・バーク会長は、少々トーンダウンしているのだ。 地元の自治体を相手に訴訟を起こし、一応はマスターズ3日目、4月12日の抗議のデモの許可を得たNCWOだが、戦争という逆風に、世論の関心が遠のいてしまっているというわけだ。加えて“反バーク”の声も高まっている。 悪名高き白人至上主義団体、KKK(クー・クラックス・クラン)の下部組織であるホワイト・ナイツという団体が、(バークの)抗議に対する抗議として、オーガスタに味方する形で、同時期にデモを計画している。ところが、さすがにオーガスタ側も、これに対しては遺憾の念を表明、「政治的な活動に利用されることは誰も歓迎しない」(フーティ・ジョンソン、オーガスタ・ナショナル会長)とNCWOを含めるような形で、批判している。 そうした中で、マスターズの経済効果に、少なからず依存するオーガスタ市では、NCWOに反対する団体が、なんと女性団体も含めて、いくつか結成されたりもしている。加えて、フロリダのあるグループは、www.TheBurkStopsHere.comと名付けたインターネット・サイトまで作り“反バーク網”が出来上がりつつある。 ともあれ、戦争によって世論が右傾化し、少数意見の声が届かなくなるというのはちょっと考えものではあるが、戦争の一刻も早い終結とともに、マスターズが滞りなく開催されることを願うばかりだ。