週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
これまでマスターズの優勝者には、生涯出場権が与えられていたが、昨年、この生涯シードのルールが改訂、来年から65歳以上の選手、もしくは前年に10試合以上の試合に出場していない選手は、出場権を失うとされていた。そして、このルール改訂に先立ち、昨年はマスターズ委員会がG・ブリュワー(71)、B・キャスパー(71)、D・フォード(80)の3人に対し、マスターズ出場を辞退するよう薦める手紙を送っていた。そのため、これに怒ったブリュワーが、昨年のチャンピオンズディナーに欠席するなど、ちょっとした問題になっていたのだ。 パーマー、プレーヤー、二クラスの3人については、確かに今年は新ルール下でも、出場権があったのだが、パーマーは「マスターズ委員会から手紙をもらいたくない」ということで、昨年を最後にマスターズからの引退をほのめかしていたし、ニクラスも、新ルールの趣旨もあって「優勝とは言わないが、トップ10に入れるくらい戦えるというフィーリングがなければ出場したくない」と語っていた。そして、プレーヤーに至っては、「約束が違う」と猛反発。 ちなみにマスターズ以外でも、かつて全米オープンに優勝すると生涯シードがもらえていたが、このルールを改訂、10年シード(現在は5年)としたが、ルールを改訂する1970年前の優勝者に対しては、いまだに生涯シードを認めている。つまり、優勝した時点で、生涯シードを選手に約束していた以上、ルールを変えても、適用されるのは、ルール改定後の優勝者に限るとしているわけだ。昨年、プレーヤーが、マスターズの優勝で獲得したグリーン・ジャケットをオークションに出したのも、この約束違反に抗議したためとも一部では噂されている。 こうした反発のためか、結局オーガスタのH・ジョンソン会長と、メンバーでもあるパーマー、二クラスが話し合い「過去の優勝者は、彼らが競技者として十分に戦えると思っている限り、いつまでも出場できる」(ジョンソン会長)と、新ルールを白紙に戻し、ビッグ3の揃い踏みが、今年も確定したのだ。 ある意味、女性メンバーの入会問題に揺れるオーガスタナショナルとしては、これ以上のゴタゴタを避けたかったのだろうが、この問題が二転三転して注目された分だけ、ただ顔見せだけのために出場する選手に対する批判の声が高まり抑制効果が表れているのも確かだ。 「私たちは皆、何人かの選手が、その特権を乱用しているの知っている。彼らは(せっかく招待されてプレーできるのに)1ホール、あるいは9ホールだけプレーして棄権してしまう。(少なくとも)36ホールはプレーできるのに、なぜ止めてしまうんだ?」とT・ウッズが語るように、やる気がないのなら、出場するなと言わんばかりの声も出て、従来のようにシニア選手たちが気楽に出場できる雰囲気はなくなりつつある。そうした意味では、ルールは白紙に戻したものの、マスターズ委員会としては、当初の目的を果たしたとも言えるかもしれない。 ただ、昨年のマスターズで、この問題に対して質問されたジョンソン会長が、「すでに決まったことで、見直しはない」と断言していたように、これまで、マスターズ委員会といえば、一度決めたことは決して翻すことはなかった。それだけに、G・プレーヤーの「ジョンソン会長とマスターズ委員会が、自分たちの誤りを認め、白紙に戻した勇気に敬意を払いたい」という発言にも繋がってくるのだが、一様に驚きの声が出ているのも確か。 深読みかもしれないが、こうしたオーガスタの態度軟化は女性メンバーの入会問題にしても、解決が近いことを示している?