週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
米ツアーで、まず気がつくことは、なんと言ってもベテラン勢の活躍だろう。昨年は、年間でなんと18名の初優勝者を出し新旧交代が話題となったが、今季はプレーヤーズ選手権終了時点でまだ初優勝者はゼロ。 一方、対照的に、欧州ツアーでは、聞きなれない名前の優勝者がズラリと並んでいる。欧州ツアー13試合中、初優勝者がなんと6名、アメリカで開催されたWGC-マッチプレーの優勝者、T・ウッズを除けば、半分の試合で初優勝者を出した計算になる。しかも、開幕戦のP・ハリントン、オーストラリアで2勝したE・エルスを除いた残り3人もまだツアー2勝目、知らない名前ばかりが並ぶのも無理はないといえる。 米ツアーに目を向けると、優勝者ばかりでなく、優勝争いをした2位、3位に入った選手にも大ベテランとも言える名前が結構出てきている。例えば49歳のJ・ハースは、ボブ・ホープとTPCで2位に入り、47歳のS・ホークが優勝したフォード選手権では、B・ツエー(43)が3位に入っている。あるいは、ニッサンオープンでは46歳のF・ファンクとN・プライスが3位と4位に入り、ぺブルビーチで、D・ラブIII(この13日で39歳になる)と優勝を争った、T・レーマンも44歳と、ベテランたちが大活躍しているのだ。 どうして、こうした現象が起きているのか? 第一に考えられるのは、ゴルフ用品の進歩で、ベテランたちの飛距離が伸びて、若いロングヒッターたちと対等に戦えるようになったことだろう。開幕時に大活躍したE・エルスやV・シンの飛距離が大きく伸びたことは以前にも書いたが、例えばJ・ハースなども「タイトリストの983Kを使用して、6~10ヤードは飛距離が伸びている。以前は、試すためにバッグにドライバー2本入れて試合会場にやって来たものだが、やっと自分にフィットしたクラブを見つけることができた」とか。加えて「タイガーやデュバルの影響もあって、今では、老いも若きもフィットネスに励んでいる。ツアーのフィットネストレーラーは、空いている場所がないくらいだ」(ハース)と言うことで、もともとスウィングが安定しているのに加え、筋力トレーニングで選手寿命が伸びたのと、用品の影響で、年々伸びるツアー開催コースのヤーデージに、ベテランたちも対応できるようになってきたものと見られている。 「自分のスウィングは、もう長年変わっていない。若いプレーヤーたちのスウィングでは、凄いスコアが出ることもあるが、悪いときもある。その点、私の場合、突然スランプになることもないんだよ」とS・ホークが語っているが、ある意味では、飛距離がアップした分、シーズンのはじめに記録的なスコアが相次ぎ、それによって優勝を狙う若手プレーヤーたちが、よりいいスコアを出そうと無理して自滅する中、安定したプレーをするベテランたちが、勝ち残ったということかもしれない。 それならば欧州ツアーでの初優勝ラッシュはどういうことなのか? 基本的には、欧州ツアーは11月下旬からシーズンが始まっているため、ベテランやトップの選手たちが、さほど多く出場していなかったことが一番の理由だろう。実際、初優勝組の6人のうち、4名までが、1月までの優勝だし、残りの2人はイラク戦争の緊張が高まったドバイデザート以降の優勝となっている。 ただ、もうひとつ注目したいのは、今年から欧州ツアーでは、米ツアー同様、高反発ドライバーが使用できなくなったことだ。たしかに、それでも昨年よりは、飛距離のランク上位の選手たちは、距離を伸ばしているが、ランク50位前後となると、昨年より飛距離を落すプレーヤーも出ている。そうした意味では、アメリカとは異なり、こちらは高反発ドライバーの恩恵を受けてきたベテランたちが、活躍できる余地が少なくなったと言えるのかもしれない。 今週開催のマスターズ、もちろん本命はタイガー・ウッズだろうが、アメリカのベテラン勢も要チェックだ。