週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
ゴルフ場の場合、経営会社が新しくなっても、必ずしも名称を変えるわけではない。会員をはじめ利用者の意向や、変更することで起こる混乱、莫大な経費等を考慮すると、一般には変更しない方が得策だからだ。 そのため、ちょっと意外に思われるだろうが、これまでコース名変更が最も多かった年は、バブル真っ只中の90年で、その数は38コースに上った。膨大な手間と経費をかけても風格あるクラブ名に変更するなど、大規模なCI(コーポレイトアイデンティティ)を実施するゴルフ場が相継いだからである。 その後、バブルが崩壊すると名称変更は急速に沈静化した。ところが、経営交代コースが急増した3年前から再び増加、2年連続で年30コース台を記録した。多少コストがかかっても、それまでのイメージを断ち切り、新しいゴルフ場として再スタートを切ろうとするためである。とくに経営破綻コースを引き継いだ場合は、悪いイメージを打ち消すためかコース名を変更する例が多い。そして、昨年。名称変更の数は、ついに過去最高の41コースになった(このうちの3分の2程度が経営交代のゴルフ場)。しかも、最近の新しいネーミングには明らかなトレンドの変化が見られる。 名称変更コースが増加し始めた3年前は、名称に地元地名を付ける例が目立った。そこには、地元に受け入れられ、より地元ビジターに利用してもらいたいという、バブル期にはなかった思いが働いたようだ。そうした傾向は今も続いているが、その他にも、たとえば「アロハCC」(旧・リレントCC)や「あつまるレークCC」(旧・トーナンレークCC)といった「風格」よりも「親しみやすさ」をイメージさせるネーミングが増えてきたのだ。 ちなみに「あつまるレーク」は(株)雇用促進事業団が新経営会社で、九州を中心に週刊『あつまるくんの求人案内』という求人誌を発行しており、「あつまるくん」という名称は九州全域では認知度が高く、親しまれている名前なのだそうだ。 「それと、なるべく多くの皆さんに集まってもらってゴルフを楽しんでもらいたいという思いが名称の由来になっています」(同CC広報担当者) また、今月22日には旧・富士中央CCが「壮快美健館富士一ばんゴルフ」というユニークな名称で営業を再開する。ただし、この名の由来については、新会社が「その件については、近々正式に発表させて頂きます」とのことで理由は不明。 それはともかく、こうした最近の新名称の傾向について、ゴルフ場経営アドバイザーの菊地英樹氏は、「確かに以前の権威を感じさせる重い名称から、カジュアルで親しみやすさを感じさせる名前になる傾向があります。おそらくそういうコースは運営自体もカジュアルなんだと思います」と分析。そのうえで菊地氏は、例えばビジター客中心のノーキャディ&乗用カートといったカジュアルな運営に変わったゴルフ場なら、コストがかかっても思い切った名称変更をすべきで、コスト等で難しい場合は、ニックネーム(例:吉川インターGCは「メッチャ」の通称で知られる)での呼称を徹底すべきだと提言する。 「それくらい徹底して変えた方が、コースが全く新しくなったことが利用者にいち早く浸透するでしょう」 ならば、名称のカジュアル化は今後も続きそう。中には居酒屋とまがう呼称のゴルフ場が生まれるなんてことも……。