週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
この3月、セイコーエスヤードでは、同社の主力商品である「T9BL」シリーズに、新たに「T9BL-e」というドライバーを加えた(希望小売価格8万8000円)。このクラブ、「ドライバーショットが苦手な人でも、安定したビッグショットを実現」するやさしいクラブだそうだが、最大の特徴はそのヘッド体積。なんと290cc。(シャフト長は44.5インチと43.5インチ)ちょうど現在主流のスプーンと同程度である。 約10年前、長尺・大型のチタンヘッドをいち早く世に送り出し、その後の大型化の先鞭をつけた同社が、今度はその“呼び戻し”で小型化のトレンドを作ろうとでもいうのだろうか? 「そういった意図ではありません」と説明するのは同社企画課長の田中公範氏だが、290ccという体積は、あくまでも実際に多くのゴルファーに試してもらい、そこで得られたデータから導き出された結果だという。 「アベレージゴルファーにとっての振り抜きやすいクラブとは、これまでは、当社も追求してきたスウィートエリアが広く安心して振れる大型ヘッドということでした。しかし、実際にユーザーの声を集めると、それとは別のキャラクターに安心感を得るゴルファーが数多くいることがわかったんです」(田中氏)。 それがティアップしたボールをスプーンで打つと、いい当たりが出るというゴルファーたちだった。同社はちょうど1年前、43.5インチという当時の長尺化トレンドに逆行するドライバーを売り出し、話題を集めた。これも(長尺に比べ)ヘッドスピードが落ちるのと引き換えに、振り抜きやすさを高め、ミート率を挙げることで「やさしさ」を狙ったクラブだった。 そして、今回は小さなヘッドのほうが振り抜きやすいと感じるゴルファーに向けて小さくする分、スウィートエリアが狭くなるマイナス要素を、有害なスピンを抑え、パワーをボールに効率よく伝えるという設計でカバー。やさしく振れて飛距離も方向性も得られるというのだ。 300cc程度の小型ヘッドは、マルマンやミズノから初心者向けの低価格クラブとしてこれまでも売られており、小型ヘッドに対するニーズは初心者層を中心に一部にはあったのだ。 「やさしいクラブとは、決してひとつではなく、ゴルファーによっていくつかあるのでしょうね」(田中氏) ところで、大型・軽量化一辺倒の時代から、複合素材ヘッド、そして小型ヘッドの再評価へと複雑化の様相を呈してきた。その中で小型化傾向はさらに進むのか? 「その点は未知数ですね。長尺の流れから、44インチ台が新しく開発されたような、呼び戻し現象のひとつでしょう。実際、大型ヘッドにもまだ可能性は残されていますから、一気に流れが変わるということはないのでは?」と語るのは、用品業界に詳しい片山哲郎氏。 ともあれ、選択肢が増えることはゴルファーにとっていいことに違いない。