週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

　このほど、アルバトロスを達成したとして、保険会社に架空の記念品代、祝賀会費用を請求、保険金を騙し取ったとして、奈良市の飲食店経営者が詐欺の疑いで逮捕された。この飲食店経営者は、昨年の5月、京都府にある自分のホームコースでプレー。飛ばせば1オンも狙える左ドッグレッグの山越えのパー4をショートカットして、山の中にボールが入った可能性があるとキャディが探していたところ同伴競技者の友人がカップ内にボールが入っていると主張。このアルバトロスがその後の申請で認められ、6月には保険会社から上限の100万円が口座に振り込まれた。

　ところが、この人物は記念品も買わず、さらには自分の飲食店で祝賀会を開いたように見せかけ、架空の領収書で保険金を請求、100万円を騙し取った疑いで逮捕され、この容疑は認めているものの、アルバトロスに関しては実際に達成したものだと供述しているという。

　ところで、なぜ1年近く経った最近になって逮捕となったのか。保険会社関係者によれば、「保険金を支払う前にある程度の調査はすることがあっても、保険を支払った後で再調査することはまずあり得ない。今回は警察の暴力団対策課が動いたようなので、おそらく暴力団関係絡みの線で警察で浮かび上がった可能性が高い」と見る。

　一般にホールインワン保険金詐欺には大きく分けて二種類ある。ひとつは、保険会社への申請には、キャディ、同伴競技者の証明が不可欠なため、そういった関係者とグルになってホールインワンを達成したものとして保険金を騙し取るというパターン。そしてもうひとつが、実際にホールインワンを達成したものの、架空の領収書を偽造、保険金を騙し取るというパターンだ。今回の事件で、容疑者の供述が真実とすれば後者のパターンとなる。

　前者のパターンでは、かつて秋田県で起こったケースでは、保険会社4社から約500万円を騙し取ったとして、懲役2年4カ月の判決が出ている。詐欺罪は決して軽くないのである。後者のパターンでも詐欺罪となるのは言うまでもない。

　ところが、意図的に詐欺行為を働く意識はなくても、一般ゴルファーが知らず知らずに詐欺罪を犯してしまうことが少なくない、と警鐘を鳴らすのはゴルフ場関係の問題に詳しい宅島康二弁護士だ。

「皆さんの周りにも、“記念品購入とか祝賀会で使ったけど、保険の限度額までまだ余裕があるので、領収書をごまかして自分のクラブを買った”などと、悪気なく話す人がいると思います。もちろん、逆に自分の欲しいクラブを先に買って、残りを記念品等に充てるという人もいますが、そういう行為は保険金詐欺であることを知っておくべきです」

　保険が認められる条件は、保険会社によって多少の違いはあるが、おおよそ次のようだ。（1）9ホール以上の国内のゴルフ場（有料）で達成されたもの、（2）パー35以上の9ホールを正規にラウンドして達成したもの、（3）原則としてキャディ付きで同伴競技者1名以上いた場合等々だが、それでも以前と比べ、条件は緩やかになりつつある。たとえば、かつては2名以上の同伴競技者と18ホールの正規のラウンドを達成したものだったり、キャディ付きが絶対条件だったのが、セルフプレーが増えた最近のゴルフ事情を踏まえ、保険会社によっては、ゴルフ場の従業員が目撃した場合や、ビデオで記録されていて確実に証明される場合には、認められるという新しい条件も増えてきた。

　それはともかく、こういった保険金詐欺はどういった経緯でバレるのか？ 保険会社が独自で調べることはあるのか？ 1982年にホールインワン保険を初めて世に出した保険会社・共栄火災海上保険（株）によると、「私ども保険会社の立場としては、お客様を信頼するというのは大前提ですし、この保険は、数ある保険の中で唯一、お祝いの保険。ですから保険金詐欺だという前提で調査することは通常ありません。達成した証明書を提出したゴルフ場の信用問題にもなりますし。保険金を支払らわせて頂くために、十分な確認をさせていただくケースもある、ということだけをお含み頂けたらと思います」（広報担当・腰塚弘氏）と説明する。

　くれぐれもついうっかり“犯罪者”にならないように注意したいものである。