週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
今回施行された「健康増進法」では、多勢の人が集まる施設の管理者は、施設内での受動喫煙(喫煙者以外も煙を吸い込んでしまうこと)を防止する努力策が義務付けされている。努力義務なので罰則はないが、受動喫煙による健康被害が証明された場合には、施設管理者は被害者から責任を追及される可能性がある。愛煙家にとっては、ますます肩身が狭くなるようだが、実はオープンエアの広々としたゴルフ場も同法の対象になっている。とはいえパチンコ店などと違い、室内が紫煙に溢れて非喫煙者の健康被害が十分に考えられるような施設ではないので、同法によって責任を追及される事態は起きにくい。 ところが、以前から思い切った禁煙措置を実施しているゴルフ場がある。ひとつは、千葉県の八房GCで、愛煙家が一番タバコを吸いたくなるレストランを完全禁煙(分煙でも時間帯禁煙でもない)にしているのだ。 「先代オーナーの考えで、ゴルフは老若男女がこぞって健康を維持・促進するために行うスポーツだと、実は開業(86年)当初はレストランのみならず全館完全禁煙にしていたんです」(営業次長・雪裕爾氏) さすがに全館禁煙は窮屈過ぎ、愛煙ゴルファーから非難ごうごうだったようで、次第に喫煙コーナーが設けられるようになり、5~6年前に禁煙はレストランだけとなった。それでも完全禁煙の規則はかたくなに守られている。 「とくにビジターのお客様からは『楽しむために来たのに』とか、『お金を払っているんだから』といった不満の声が多く聞かれます」(雪氏) しかし、会員ら多くのお客さんは「レストランでの喫煙は嫌煙者を巻き込む場所でもあるから」とのゴルフ場側の考えに理解を示しているそうだ。 また、山梨県のメイプルポイントGCでは、今年から朝~昼食時には館内のレストラン、ロビー、廊下を禁煙。ホールアウト後に利用するディナーレストランは分煙とし、テーブルの7割を禁煙席としている。 「もともとはタバコの煙を嫌うお客さんからフェローシップ委員会に、禁煙措置の要望が数多く寄せられ、それに応じて昨年11月の理事会で決まったことです。私も、レストランの全席禁煙には理解が得られるのかと不安でしたが、意外にも理解してくださる方がほとんどで、トラブルもありませんでした」(杉山勝己支配人) 実際、愛煙家だって受動喫煙は嫌なものだし、吸わない人を気遣いながら吸ってもおいしくないのだろう。それなら堂々と吸える場所(隣接のラウンジ)に行って吸えばいい。そのほうが食事も楽しめるということなのかもしれない。 ただし、レストラン以外のところで禁煙規則によるちょっとした混乱が起きた。それはコース内でもティグラウンド以外は全面禁煙とし、コース内禁煙を徹底させるため、乗用カートから灰皿を撤去したのだが、ティグラウンドで火を点けたタバコを手にしたままカートに乗った場合の処理に困る。 「とくにノーキャディの組では、灰皿がないのでコース上にポイ捨てするケースが多く、枯れ芝が焼けるといった事態も考えられましたので……」(杉山氏) 結局、この4月から同GCの乗用カートには灰皿が復活した。 このように、今回の「健康増進法」の施行を契機に、今後はゴルフ場でも禁煙をめぐっての試行錯誤、紆余曲折が繰り返されるのかもしれない。