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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 5/20号
2003年更新
戦前開場の歴史ある熱海GCが6月で解散
コースの今後について会社側は説明なし
 戦前開場のゴルフ場で、赤星四郎設計で知られる熱海ゴルフ倶楽部が、6月30日をもって解散、コースも閉鎖されることになった。経営会社である(株)熱海ゴルフコースホテルの清算手続きによるものだが、「小さな宝石」と謳われたコースが消え去ることに、会員からは惜しむ声が上がっている。

 同GCは昭和14年、熱海ゴルフ場として開場。9ホールながらインとアウトで使用ティを変え、趣深き深いコースとして人気もあった。しかし、不況の波に飲みこまれ、経営会社が解散、清算手続きに入ったのは、今年2月14日のことだった。

「会社の解散により、任意団体である倶楽部の解散も会則に謳われています。今後については、言うべき立場にはありませんが、地主さんの意向次第ということになります」とは、同社の清算人である中森峻冶弁護士。

 もっとも法的整理により解散するわけだが、最近では一般的になった、いわゆる預託金問題に端を発する法的整理ではない。というのも、同GCは平成8年からすべての会員に預託金を返還してきた。額面の最高は500万円だが、古いコースということもあって、総額で数千万円規模の返還を行なった。代わって入会金180万円(預託金ゼロ)で新会員を募ったが、思うように集まらず、年会費を個人正会員では2万5000円から7万3500円に、法人正会員を5万5000円から14万5000円に値上げし、反対に入会金は60万円に値下げ、最後は年会費のみの会員を集めるところまでいったものの、経営改善までには至らなかった。

 ちなみに一時1000名を数えた会員も、現在は約800名。また歴史あるコースということで、メンバーの高齢化も深刻な課題だった。毎年1000万円単位で赤字を計上、とうとう清算手続きに踏み切った。

 しかし、会員にとって気になるのは、今後コースがどうなるかだ。4月3日の会員説明会でも、それについては会社側から一切説明はなく、「なんとかして文化財ともいうべきコースを守って欲しい」との声も、一部会員からは上がっている。

 ゴルフ場施設の所有者はもともと3人の地主だったが、古いコースらしく代替わりし、現在、地主は10数名。6月30日までに施設を地主に返し、あとは地主がどのように判断し、ゴルフ場施設を処分するかということだが、今後どこか引き受け手が現れるのか、廃墟と化してしまうのか、その意向については依然、不明のままだ。

「6月30日までに、整理、整頓し、きちんとお返しするため、粛々と業務を行なっています」とは、戦後間もない頃、22歳で同GCに就職、今年72歳になる武井素六支配人だ。それだけに、コースや倶楽部が消滅することに、無念さを隠し切れない。

「あくまで個人的な思いですが……」と前置きし、次のようにその想いを語る。

「算盤勘定だけでは計り知れないのが、この素晴らしいコースであり、倶楽部だと思います。去りゆく古い人間が言うべきことではないかもしれませんが、長い日本のゴルフ文化の1ページを綴ったコースです。情熱をもって後世に残して頂けたら、とは全従業員に共通した思いだと思います」

 清算手続きに入った後、料理長が黙ってメニューに加えたのが、鶴と亀の形に刻んだリンゴである。鶴は千年、亀は万年の諺から、長くこの熱海ゴルフ倶楽部の歩んだ歴史を、愛してくれたゴルファーの心に刻んで欲しい、との思いからである。

 一部会員に存続を求める声があるが、高齢会員が多いせいか、今のところ会員が一丸となって、コースや倶楽部の存続のために動くという気配は起きていない。当然ながら、未来を決する地主と交渉する動きも、今のところないようだ。時代の流れといってしまえばそれまでだが、日本のゴルフ史の1ページを飾ったコースが、単に「不況」というだけで消え去っていくのは、あまりにも悲しい現実である。

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